第36話 武術試験

 アンジェラ叔母様の護衛もあり、高等科学園に無事に到着した。ここからは受験生しか入れないので、お母様とハグをしてから別れるが、その表情は曇っている。


「ママ? 私は大丈夫だからね? 叔母様も護衛ありがとう」

「本当に無理をしちゃダメよ?」

「うん、無理だと思ったら試験は棄権するからね? じゃあ行くね」


 私のこと心配するお母様に『大丈夫』と伝えて頬にキスをして別れて移動する。


 武術試験が行なわれる会場の前に着くと、模擬戦闘を内容をもう1度確認する。武術試験は受験生による模擬戦闘で、勝つに越したことはないけど、勝ち負けではなく試験官による技術審査となるの。


 私の相手は男爵家出身で騎士志望の女の子だった。自分の模擬戦闘が行われるまでは、見学をしながらの待機となるので、私達はみんなで模擬戦闘を見学していた。対人戦を見ていると昨日のことを思い出し少し気分が悪くなり、隣に座っているファビオの手を強く握る。


「大丈夫?」

「うん、もう少しこのままで」

「うん」


 ファビオは握った手を優しく握り返してくれた。そうしてるうちに少しずつ落ち着きを取り戻すことができた。そして、私の模擬戦の順番がやってきたようで、試験官から呼び出しの声がかかった。


「リディアーヌ.レイバック嬢とセシリア.メルク嬢は闘場へ上がるように」

「じゃあ、行ってくるね」

「リディ頑張ってね」

「「姫様、ご武運を!」」

「うん」


 私は模擬戦が行なわれる闘場へ上がる。騎士志望の女の子は木剣と木盾を、私は木剣のみを手にして互いに構えると、試験官より注意事項の説明を受ける。


「木剣とはいえ急所への攻撃は禁止。相手が負けを認めるか、私が止めるまで戦闘を続けるように」

「「はい」」

「では、模擬戦を開始する。はじめ!」

「やぁーっ!」


 試験官の開始の合図とともに、メルク嬢は盾を前に間合いを詰めて攻め込んできた。私の剣を弾いて隙をつくつもりだろうけど、剣先を盾の中央に突き立てることで、メルク嬢の突進する勢いを止めた。


「くっ」


 予想外の展開に迷いが生じたようで、ここは距離を取るのが正解なのに、そのまま盾で押し切ろうと力を込めて、盾を持つ手に力を込めて押し続けた。私は力勝負をせずに力を緩めるて剣を引く、するとメルク嬢は前のめりになりバランスを崩すと、引いた剣をメルク嬢の胸元へ突き立てた。


『シュッ』

「あっ……」


 完全に勝負が決まったと思ったけど、試験官は試合を止めなかった。メルク嬢も負けを認めない。このまま模擬戦は継続するみたいなので、仕方なくいったん距離を取った。


(打撃を入れないとダメなのかな?)


 私は剣を構え直して攻撃をしかける。斬りかかるのではなく、連続で突きを放ってメルク嬢を後ろへ下がらせて、闘場の隅へと追いやった。


「あっ……、まだやれるっ!」


 これ以上下がれない状況になったメルク嬢は、両手で盾を持ち強引に押し切ろうとしたが、突き立てた剣を下へスライドさせて、右足のつま先を軽く突く。


「痛っ!」


 メルク嬢はつま先の痛みに耐えられず、思わず右足をあげた。私はもう一度盾に向かって突きを放つと、片足では踏ん張りが効かずに場外へと落下して戦闘不能となった。


「そ、それまで!」

「ありがとうございました」

「そ、そんな……」


 試験官が試合を止めたところで、私の勝利が確定したことで模擬戦闘を無事に終えたの、。


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