閑話 王と辺境伯
§ファーガソン王視点§
ガウェインから学力試験を終えた報告を受けていると、側近が慌てながら駆け寄ってきた。なんでもメフィストが至急の面会を求めているらいし。
「ガウェイン、至急の用ができた。明日からの試験も頑張るのだぞ」
「はい、父上!」
ガウェインが部屋を去って行くと、側近の案内でメフィストの待つ部屋へと移動する。
「それで、至急の用とはなんだ」
部屋へ入ると、宮廷医師団により右腕の接合術を施されていた。ワシの姿に気づいたメフィストは、苦悶表情をしながら跪こうとするが治療を優先させる。
「よい、いったい何があったのだ?」
「辺境伯の母子に登城するように伝えたのですが、あろうことか辺境伯夫人が拒否をしたので、少し痛めつけようかと思ったのてすが、この通り護衛に腕を斬り落とされました……」
「ま、まさか、登城を命令したのか?」
「は、はい」
辺境伯夫人に登城命令をしたと聞いて『マズイ』という思いが脳裏をよぎった。
「馬鹿者!辺境伯家へは王家であっても強制はできないのだぞ!」
「!?」
レイバック辺境伯家は、帝国の侵攻からファーガソン王国を守る代わりに、決して強制しないというものが盟約の一つだったからだ。これを守らなければ王国から離反されても文句は言えない。メフィストの治療なんてどうでも良い、大至急辺境伯家へ使者を送って謝意を伝えねば……、国の存亡に関わる案件に頭を悩ませたのだった。
§ミゲール視点§
王都に滞在する補佐官から、緊急通信が届いたと報告を受けた。
『王家の使者から登城命令を受けたのですが、奥方様は登城を拒まれました。するとその使者は奥方様と姫様に危害を加えようと……』
報告の途中だったが、『危害』という言葉を聞いただけで私はキレてケントに命令を言い渡す。
「ケント、王都へ進軍し王家を討つぞ。大至急進軍の準備にかかれ」
「ミゲール様、どうか最後までお聞きください! 奥方様とお嬢様はご無事なのと、手を出そうとした不届き者は、ファビオ様によって右腕を切断したそうです。進軍については、王家からの反応を待ってからでも良いかと」
ファビオによって不届き者の腕を切断し、シアとリディは無事たと聞いて、進軍はなく単騎で王都を目指すことにした。
(優しいリディがシアを守る為に……。想像を絶するほど心を痛めているはずだ……)
「ケント進軍はせずに王都へ向かうぞ。リディが心を痛めていると思うと、こんな所でジッとしていられない。直ぐに最速の馬を用意しろ!」
「かしこまりました。ただし、クレメンテの動向をお許しください」
「良いだろう。直ぐに準備をしろ」
私は直ぐに準備を整え、休憩を取ることなく王都を目指したのだった。
(リディ、怖かったよね? パパが直ぐに慰めに行くからね。そして王家よ……、私の天使を怖がらせたのだ。ただでは済まさないからな……)
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