第22話 サプライズ

 私はお披露目会の開宴を告げるファーストダンスをファビオと踊っていると、周りが騒々しいことが気になったの。


「周りが騒々しいのは、私が辺境伯家令嬢に相応しくないと思われてるかしら?」


 私の世代には同性が居ない。異性であればファビオや四男爵家の令息達が居るので、見比べればファビオは別格に格好良いのだと判る。私は比べる対象が居ないので、私の容姿のせいで騒々しいのかと思ってしまう。


「リディの美しさに驚いているんだよ。普段から見慣れている僕だって、今のリディを見た時は驚いたんだよ? 他の者達が初めて見れば騒がしくなるよ。それ程までにリディは綺麗なんだよ」

「えっ、あっ、ありがとう」


 ファビオの口から『綺麗』なんて聞かされて、照れてしまい顔が熱くなった。そんな私を微笑みながら見つめてくるので、目を合わせることができなかった。


 無事にファーストダンスを終えると、私達はお父様とお母様の元へ歩み寄って、私はカーテシーで、ファビオはボウ・アンド・スクレープで挨拶をする。


「皆も知っていると思うが、私の最愛の娘リディアーヌと、後継者候補のファビオだ。2人が次代のレイバック辺境伯家の顔となる。この場で2人の婚約をすることを宣言しよう!」

「「おぉ~!」」


 お父様が突然ファビオとの婚約宣言をしたことで、私の頭は真っ白になった。私としては願ってもない相手だけど、ファビオには私なんかよりもっと相応しい女性が現れるかも知れないと思っていたからだ。


 私が呆気にとられていると、隣のファビオはお父様の前に跪いて、婚約宣言に対する返事をする。


「このファビオの全身全霊を持って、リディアーヌ様を如何なる者からも守り、この世界の誰よりも幸せにすると誓います」

「ふっ、当然だ。ファビオ以外の適任者は居ないからこその選択だ。決して失望させないように精進しなさい」

「はっ、さらなる精進に励みます」

「リディ、次はパパとダンスを踊ってくれるかな?」

「う、うん」


 お父様は私の手を取ってホールの中央に向かうと、他の来場者もパートナーの手を取って続いたの。


 私はダンスをしながら、お父様に婚約のことで話しかける。


「ねぇ、こんな形で婚約を宣言しても良かったの?」

「リディが望まないなら取り消しても良いんだよ?」

「私は、凄く嬉しいよ。でも、ファビオは心から望んでいるのかな? だって、私なんかより素敵な女性が現れるかも知れないんだよ?」

「大丈夫だよ。これはファビオが望んだことだからね。周りの令息達に婚約者だと宣言しないと不安になると言っていたよ」


 ファビオが望んでいると聞いて、心の底から嬉しさが込み上げてきた。巻き戻り前を含めても、最も嬉しい瞬間に思わず言葉が漏れ目を潤ませたの。


「嬉しい……、私はファビオを幸せにできるのかな?」

「なれるさ、リディが隣に居ることこそが、ファビオの幸せだと思うよ」

「うん、ファビオの隣に相応しいレディになってみせるね」


 お父様とのダンスで婚約の真相を聞いて、ファビオの隣に居続けると誓ったの。


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