母の愛と禁術
◇◇◇アルテイシア視点
彩り豊かな庭園でティータイムを楽しんでいると、義妹アンジェラが血相を変えて私の下へと駆け寄ってきた。普段は宮廷騎士団第二師団長として王都に駐留してるはずなのに、わざわざ辺境伯領に来たということは、隣国グラディスが侵攻に備えた動きがあったのかと思った。
「姉上……、リ、リディアーヌがガウェイン殿下への不敬を働いたことで、殿下自らの手によりリディアーヌを処分しました」
『ガタッ!』
愛する娘が処分された? 信じられない言葉を耳にして思わず席を立ち上がる。
「どういうことか説明しなさい」
「はい……」
殿下が国王に報告したという、リディアーヌを処分するに至った経緯を聞いたあと、アンジェラが独自に調査した真実を聞いて、リディアーヌが殿下に嵌められことにより、非業の死を迎えたことを理解した。
己の愛欲のために、私の天使の命を奪った第二王子を許せるわけもなく、王家全員の命をもって償わすことを決意した。
「アンジェラ、直ぐにミゲールに連絡しなさい! 辺境伯軍の全軍をもってファーガソン王国を叩き潰すのよ」
「あ、姉上……、本気ですか?」
私の言葉を聞いたアンジェラは、驚きの表情を見せながら聞き返してきたが、私の天使を奪った国なんて存続させても意味がない。
「私のリディを奪った国を存続させる意味なんてあるの? ある訳ないじゃない! もし、ミゲールが動かないようなら、この身一つでガウェインだけは絶対に葬ってやるわ」
「姉上……、判りました。伝えてきます」
その後、アンジェラはミゲールの元へ私の言葉を伝えた。流石に最初は渋ったようだけど、最終的には辺境伯軍を動かし、その圧倒的な力によって王都を陥落させ、王家全員の首を刎ねファーガソン王国は消滅したのだった。
復讐を果たしてもリディアーヌが戻るわけではなく、心の中は虚しいままだった。ただ生きているだけで、死んでいるのも同然の毎日を送るだけだった。
そんなある日、聖典に記されていた禁術の中に、時間を巻き戻すものがあったことを思い出した。この禁術を使うと、巻き戻り前と新しい時間軸との記憶が混在することで、かなりの精神負担で苦しむことになる。それても、愛するリディアーヌが私の元に戻ってくるのなら、禁術を使うことの危険性など無視して【次元超越】の禁術を迷わずに行使することにした。
今、私は最愛の娘を両腕で抱きしめている。この子を守るために、私の手元から絶対に離さない。リディアーヌが望んでも王家との縁談だけは結ばず、養子に迎えたファビオと夫婦になってもらう。
「もう2度とリディを失わないわよ」
そう言って、愛しい娘の額にキスをして、どんなものから必ず守り抜くと誓いを立てたの。
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