3体寄れば文殊の知恵~中二病って凄いかも
@jyo-san
第1話 狂乱の報復
佐助は土日も休み無く「ウーバーBOOK」の仕事をしている。それは何故かと言うと答えは簡単である。気になる彼女も必ず土日ともバイトを入れているからだ。目的の物も購入し目標が達成出来たので、もう働く必要は無いのだが、彼女と喋れる事を楽しみにしているのである。もはやストーカー予備軍だ。
バイトを始めて数ヶ月間は、彼女の名前すら知る事も出来ないでいた。それも「カスハラ」対策の一環でやたらと名前も告げない、名札も付けない様にしていたからである。バイト先の配慮であろう。その為、彼女も佐助の名前は知らなかった。
だが些細な出来事から名前だけは聞く事が出来たのだ。
そして肝心な彼女の名前は「友里花 ミレイ」という名前だ。年齢は18歳で佐助からすると若干お姉様である。佐助は思った「ユリの花の様にキレイ」と覚えておこうと。
全く字は違うが、ニュアンス的なモノは認めよう・・・。
そんな中、北南高校の中で嫌な噂を聞いた。それは、狂乱高校の生徒が北南高校の生徒からカツアゲをされているという噂であった。佐助は「ドキッ」とした。もしかして自分が関係していたあの「カレー屋」での一件で、狂乱高校の奴等が借りを返す為に、動き回っているのでは無いかと・・・。でも、皆にアレコレ言われるのが嫌だったので誰にも話さず黙っていた。
いや、話す相手が居ないと言った方が良いだろう。
それから数日後・・・。
今までバイトを休んだ事が無かった彼女が急にバイト先に来なくなってしまった。佐助はその理由を店長に聞いてみた。
「店長、友里花さんは今日もバイト休みですか?最近見えないですけど、何かあったのですか?」
口数の少ない店長だが、心配になっていたのだろう佐助に話をした。
「3日くらい前だが、電話があり『数日間休暇を頂きます。』とだけ告げて、それっ切りなんだよ。逆に比況くんの方が理由を知っているのでは無いかと思っていたよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そして、バイトが終了した佐助は自宅に帰り店長から聞いた話を色々考えてみた結果。一つだけ引っ掛かる所があった。
それは、彼女の行動にあった。彼女は一度、何かの記念日に今回の様な行動をとっている。
多分、自分が上げた『ラブ活 彩の ドキドキ初体験3』をやりまくっているのであろう。
「しまったぁー!彼女はゲームにハマると2・3日の徹夜なら平気で連続して出来る忍耐力の持ち主であった事を忘れていた。僕は気を引くために、余計な事をしてしまったのか。いや、彼女はいずれあのゲームは買うつもりでいたのだから、そんな事は無いか。」
「とにかく、明日バイト先に行ったら電話番号を聞き、彼女にゲームを辞めてバイトに来てくれとお願いをしてみよう。」
多分、店長の計らいで電話番号を聞く事は無理であろうけど。
― 次の日 ―
――――――――― 佐助はいつも通りに学校へ行った。
「何だか、いつもと違う。何か視線を感じるよ。ヒソヒソ話しをされているというか、噂をされているというか・・・。嫌な感じがするんだ。」
⦅お前の能力で先読みしてみれば良いじゃないか。きっと何かを言われているのは間違い無いな。へへへ。⦆
右腕に宿りし「天使」のグリイが言って来た。
〈ですね。皆さんの視線はこちらで、顔は横を向いていますから。〉
左手に宿りし「悪魔」のオウマも言う。
「さっきから先読みはしています。でも、色々な声が入って来て何を言っているのか全く分からないのです。」
⦅お前どんだけ噂のネタにされているんだ。オモロ。⦆
〈人間の皆さんは、人をねたんだり、悪く言ったりする事が大好きな様ですからね。〉
「でも僕はそんな事気にしませんから。今までもそうやって一人で生きて来たのですから。今更何を言われようが、噂されようが知った事ではありません。」
⦅佐助、お前アホなのか。気にならないのか?狂乱高校の生徒が、北南高校の生徒に悪行を働いている事が。⦆
「僕には関係ないよ。先に勝負を挑んで来たのは向こうだ。それに、勝手に負けたクセに僕に因縁を付けようとしていた。その時カレー屋の店長が入って来てジャッジしてくれて、奴らがお金を払って出て行ったのだから。」
〈佐助さんもう分かってますよね?このままでは済まない事が。〉
「それは言わないで下さい、僕は関わりたく無いのですから。先読みの能力で僕の名前が出ているのも知っています。嫌なのですよ、トラブルが。知りません。」
⦅ちょっと待て佐助。マジで、知らないでは済まなそうだぞ。狂乱高校の奴らは、どうやらお前のバイト先まで調べ上げている様だ。俺様の地獄耳に入って来た。⦆
〈エンジ、地獄耳は天使にもあるのですか?天国耳ではないのですか?〉
⦅そんな事は今はどうでもよか!それに、もう一つ重要な情報だ。友里花ミレイが監禁されている様だ。あいつ等ヤバイな、高校生がやる事じゃ無いぞ。⦆
〈バイト先の店長への電話も、奴らに言わされたのかもしれませんね。〉
「えっ嘘でしょ!友里花さんを監禁ですか?」
〈どうするのですか佐助さん。これでも、見てみぬ振りをしているのですか?〉
「・・・・・・・・・・・・・。」
「クソー、あいつ等。北南高校の生徒だけでは無く、僕の大事な友里花さんにまでも手を掛けやがってー。こんなの黙って見ていられませんよ。僕はマジで怒りました。話し合いで決着を付けて来ます。」
⦅おいおい、いつから彼女はお前の女になったんだ?それに、女性を監禁している奴らに話し合いが通用するとでも思っているのか?⦆
⦅世の中には常識ってもんが通用しない連中がゴロゴロしているんだぞ。奴等もその類の連中だ。話し合い何て皆無だね、皆無。⦆
「ー-----------・・・・・・・・・・・。」
そして、昼になり佐助は食事をしながら「グリイ、オウマ」と3体で友里花を助け出す策を考えていると・・・。校内放送が入った。
《♬♪・・・比況佐助さん、比況佐助さん、至急職員室迄お越しください。♪♬》
放送を聞いた佐助は、教室中からの視線を浴びながら足早に廊下を歩いて行った。そして恐る恐る職員室へ入ると、更に教頭室に呼ばれた。静かに教頭室に入って行くと教頭が佐助に一枚の紙を渡しながら説明をし始めた。
『比況くん。先程当校に狂乱高校の生徒が2名来て、その紙を渡して来ました。そこに書いてある内容を読んでみたまえ。』
そこには・・・。
【先日、比況くんにケンカを売られお金まで取られてしまいました。僕達は悔しくてたまりません。この様な理不尽な事があって良いのでしょうか?話し合いをしたいと思いますので、〇丁目の工場跡地に一人で来て下さい。お待ちしております。ここには、本屋の女子も居ますので宜しくっス。】
『理解したかな。理解したら直ぐに行って来なさい。外出を許可する。』
「いやいやいや、ちょっと待って下さい。教頭先生もこの文章読みましたよね。どう見てもヤバイ内容じゃないですか!誰が読んでも、僕がボコられる設定ですよね。これ、警察案件ですよ間違い無く。」
『元々は君の蒔いた種が開花し大きくなったのですよね。育ての親は君じゃないか。手入れは親である君の義務だ。世の中そういうモノだよ。』
「何か、素晴らしい事をやった時の様な言い回しはヤメて下さい。」
『自分の育てた花は自分で管理し、花の周りに生える雑草は自分で摘み取りましょう。それが園芸の基本、それを怠ってはダメだ。行って来なさい。工場跡地へ。』
「ていうか、何で話し合いをするのにわざわざ工場跡地を指定するのですか?おかしいですよ。普通はファミレスとかカフェとかじゃないですか?これ無理だわー。」
『大人が子供のケンカに一々首を突っ込む事もあるまい。お互いにキチンと話し合いをして、握手で仲直り出来るでしょう。』
「あんた、トラブルに巻き込まれるのが嫌なだけじゃないですかぁー!ひどいですよ、生徒を見捨てる気ですね。」
『そんな事は無いぞ。可愛い生徒を見捨てる様な真似は私には出来ない事だ。これを持って行くと良い。これで解決出来ないモノなど、この世には無いのだよ。』
すると、教頭は袖の下から「茶封筒」を出し佐助に渡した。
「え――――!教職者が袖の下から茶封筒ですかぁー。こんな悪徳代官みたいな人、本当にいるのですか?夢を見ている様です。」
「しかも、これで解決出来ないモノなど世の中に無いとも言ってましたよね。」
『はははは、これは比況くんに一本取られましたな。世の中はマネーですよ、マネー。私はこれでいくつものピンチを潜って来ましたから。実際、マネーしか信じていません。マネーを持っている人が、偉く、賢く、知的であり、美しいのです。君も良く覚えておいてください。』
佐助は衝撃を受けた。大人という者は皆こうであるのか?人の事など信じず、自分と金の事だけしか信じない。自分達生徒は、この様に考えている大人に導かれ、教育され、支えられ、生かされているのかと・・・。
そして、早く型を付けて来いと言わんばかりに学校から出された。何の助も無いままに・・・。
佐助の手に握られている「茶封筒」は原形を留めていなかった。
工場跡地に向かいながら肩を落とし歩いている佐助を慰める様に、グリイとオウマは話し掛けて来た。
⦅佐助、人間の大人っちゅうもんは皆あんな感じだ。別に珍しくは無い。教頭だけがああいう事をしている訳では無いんだ。そうだよなオウマ。⦆
〈全くその通りです。私には、人間の大人が全て「もやしのオバケ」に見える事がありますよ。どんなに偉くても、その他大勢と何も変わりません。〉
「やっぱりそうですか、僕も同じです。時々クラスメイトや先生、道を歩いている人達も「デカいもやし」に見えてしまいます。何故だか分かりませんが、心を読めてしまう僕に与えられた吉凶禍福なのでしょうか?」
⦅お前難しい言葉知っているな。⦆
⦅そんな事より、このままその工場跡地に行くつもりなのか?行ったら最後、フルボッコにされると思うぞ。⦆
〈友里花さんもそこに居るのですよね。助けるなんて夢のまた夢ですね。佐助さんにご加護があります様に、アーメン。〉
「何か僕がもう負ける設定になってないですか?凄く嫌だけど、これを渡せば好転しますよ、きっと。」
佐助は持っていた茶封筒の封を開け中身を確認した。
「何――!3,000円だとー!あのクソ教頭めー!世の中金と言っておきながら、生徒のピンチにこの程度の金で済まそうとしやがって・・・鬼めー!」
「この間のカレー代、和解料、彼女の解放料を考えただけでもゼロが1つは足りないと思う。」
などと話している内に、工場跡地に到着した。立入禁止の柵を避け、声のする方へ行く。するとそこには5人の狂乱高校の生徒がたむろっていた。そして、もちろん監禁されている「友里花ミレイ」も居たのだ。
友里花は手足を縛られ猿轡をされ目隠し迄されていた。服は乱れてはいないが、頬や腕に無数の小さな傷があった。それを見た佐助は・・・怒った。
「きっ君達、そんな事をしてはダメじゃないか。高校生がやる事では無いんじゃないか?おっ親が知ったら、きっと悲しむと思います。い、今直ぐ止めましょうこんな事は。」
「おやおや、いきなりここへ来て挨拶も無しに俺等にお説教ですか?良い根性してますね、比況くん。君、空気読めない派でしょう。」
「せっかく君のバイト先も見つけて、君が心寄せている女子も連れて来てやったのにヒドイなぁ~。」
「ここヘは何しに来たのですかぁ~?」
「こ、この間のカレー代の支払いと、和解と、友里花さんの解放です。お願いします。」
「ここに3,000円あります。僕のカレー代としては充分だと思います。」
「君、状況分かってる?」
影闇陰次(カゲヤミ インジ) は仲間に指示をして佐助の両腕を掴み抑える様に言った。動きを封じられた佐助はどうする事も出来ず焦っている。
「何が3,000円だぁ~!今時3,000円なんざガキの使いにもならねーんだよ。」
「ゼロが3つ足りねぇーんだよ、お前の脳ミソと一緒でな。」
そう言うと、影闇は動きの取れない佐助をフルボッコし始めた。
友里花は立たされ目隠しを外されて、佐助がフルボッコされているシーンを見させる。友里花は泣きながら下を向き何も言えないでいた。
全身をパンチや蹴りでボコられてボロボロになっている佐助。
しかし、佐助は感じていた。ボロボロである様で、ボロボロでは無い。対してダメージは負っていないのだ。
それは、毎日の様に重たい本を運び、自転車をこぎ、階段を昇り降りする事で普段から全身の筋肉が自然と強化されていたのだ。ウーバーBOOKで鍛え上げられたボディーのお陰で筋肉がクッションとなり、ダメージを分散していたのだ。
そして、佐助は隙を見て反撃に出た。
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