奴隷クラン
米津
第一章 異世界転生編
第1話 灰色の空
奴隷のような人生を歩んできた。
父と母に逆らうことができず、僕はただ彼らに言われた通りの人生を歩んできた。
中学校も高校も大学も、そして結婚相手さえも全て親の決めた通りに僕の人生は進んでいった。
僕の人生は親のもので、本当の僕はどこにもいなかった。
すべて僕のためだと言ってくれた。
そういって何もかもコントロールしようとしてきた。
あなたのため、お前のため……。
でも知ってる。
本当は僕のためじゃない。
僕に理想の人生を歩ませることが彼らの望みだ。
僕の人生は生まれた瞬間から親のものだった。
でも、彼らも最初からここまで僕を徹底的に管理しようとしてきたわけじゃない。
きっかけはきっと小学校だ。
僕は有名私立の小学校の受験に落ち、地元の公立に行くことになった。
両親は泣いていた。
僕は公立のほうが楽しそうだと思ってたけど、両親は違ったみたいだった。
「周りの子はみんな私立に行ってるのに……。なんでうちの子は」
家では、事あるごとにそういう話題が出た。
そして訪れた授業参観。
将来の夢を語り、親に聞いてもらう時間。
当時、僕は漫画家になりたかった。
別に本気で目指していたわけじゃない。
周りよりちょっとだけエがうまくて、漫画が好きだった。
それだけの理由で、漫画家になりたいといった。
将来の夢を語る時間だけど、どちらかというと好きな漫画の紹介になっていた。
他の子たちもYouTuberとか野球選手とか言ってたから、別に僕の発言が変だったわけじゃない。
だけど母は違った。
その場で泣き崩れた。
感動したからじゃない。
恥ずかしくて情けなかったかららしい。
「他の私立に通ってる子たちはもっと現実的で立派な夢を持ってるよ! それなのにどうして……」
母は「どこで間違えたんだろう」といってずっと泣いていた。
父からは正座させられ延々と説教をされた。
その日から僕の生活は管理されるようになった。
漫画はすべて廃棄。
ゲームもダメ。
友達とも遊ぶなと言われた。
公立の子と関わったらろくなことがないと言われた。
僕は学校で一人になった。
小学生の高学年になり、スマホが渡された。
でもスマホの履歴は毎日チェック。
当然、位置情報も共有。
まるで僕を管理するために持たされたようなモノ。
そうした徹底した管理のもと育った僕は親のいうことに従うマシーンになっていた。
中学校は受験に成功し、私立の有名中学に入った。
そして高校、大学は親が決めたところに進学した。
大学生になった僕だけど、何一つ自分で決めたものはない。
就職先も決まってるし、結婚相手だって親が決めた人だ。
僕の人生なのに、まるで僕がここにいないみたいだった。
人生に意味なんてない。
こんな人生はやく終了してくれないかな?
そんなことを考えながら、横断歩道を歩いてるときだ。
信号無視した車が突っ込んできた。
避ける暇はなかった。
――ぐちゃり。
そんな音が聞こえたような気がした。
実際はもっと鈍い音だったような気がする。
でも僕には何かが潰されるような音に聞こえた。
――ああ、このまま死ぬんだな。
そう思った。
僕の人生はなんだったんだろう?
親に決められたとおりに生きてきた人生だった。
何もない人生だった。
虚しい。
最後に見た光景は、灰色の空だった。
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