第27話
結局、俺らが札幌で戦ったのは、ゴールデンウィークの初日だけだった。
BMは修理の必要があり、今回の戦闘データを元に、各部の調整も必要だからだ。
ゴールデンウィークの残りで北海道観光をしてから、昨日の午前、学園に戻ってきた。
そうして、ゴールデンウィークが明けた初日。
俺が顔を出すと、教室は大騒ぎになった。
「おおおおい! 神明お前凄い奴だったんだな!」
「神明君、ホーネット倒したって本当!?」
「放課後でいいから、巨大ロボ見せてくれ!」
クラスメイトたちが、わっと取り囲んできた。
「え? どうしたお前ら?」
「なんだよ神明、お前新聞読んでいないのか?」
拓郎が首を傾げると、優馬が俺にも見えるよう、MRデスクトップを開いた。
「これだよ、これ」
そこには、俺らの活躍を説明した、デジタル新聞の記事が表示されていた。
俺ら四機の巨大ロボだけで、A国戦車師団の戦車を五〇〇両以上も殲滅し、最強の空戦兵器の一角であるホーネットを撃墜したこと。
物流の要である国道三六号線と、ベースキャンプ状態だった大通公園を取り戻したこと。
北海道の北半分を占領され、A国軍の南下を止められなかったこの戦争で、初めて南下を食い止めるだけでなく、戦線を北に押し上げたことが書かれていた。
話はそれで終わらない。
A国は、北海道の政治と経済の中心地である札幌だけは奪われまいと、北海道各地の戦場から、軍を札幌に集結させたようだが、そのせいで戦力の落ちた各地の戦場は、日本軍の優勢となっているらしい。
速報では、既にA国軍が撤退を始めた町もあるようだ。
そのきっかけを作った俺ら四人、そして巨大ロボプロジェクトを進めたミア姉は、まるで英雄のような扱いだった。
ちょっと大げさな気もするけど、今は戦時中だ。
国民を安心させるためにも、良いニュースは大々的にやる方針なんだろうな。
それでも、この数日は観光に夢中で、俺らはまったく気づかなかった。
「あ、待ってくれ、メッセージだ」
『くまくま♪』
視界に、ARモードのくまお君が、カセットテープを握りしめたままスキップしてくる。
萌仲のように電子ペットをMRモードにして、この可愛さをみんなにもお届けしたいところだが、高校生にもなって可愛いくまさんを侍らせている姿など見せたくないので、俺はくまお君を基本、ARモードにしている。
くまお君が、カセットテープをラジカセに入れて、再生する。
『弟者よ、放課後は新聞社と軍広報部の取材がある。その後は場所を移動して雑誌の取材と、総理大臣直々の勲章授与だ。体を空けておいてくれ!』
ミア姉の、凛としたボイスメッセージだった。
取材……なんだか面倒くさそうだなぁ。
個人的には、あまり大事にしてほしくない。特に、取材となれば俺のことを過大評価している愛希が、恥ずかしいことを言いそうで頭が痛い。
「今ミア姉、じゃなくて美秋少将から連絡があった。放課後に用事入ったから、巨大ロボを見せるのはまた今度な」
「用事って?」
「それは……」
取材が来ているとか、総理大臣から勲章を授与とか、自分で言うのは自慢だよなぁ。
と俺が返事に困っていると、萌仲を小脇に抱えた愛希が、皆恋を連れて飛び込んできた。
「聞きましたか兄さん! 放課後は新聞社と軍広報部の取材でその後は雑誌の取材と総理大臣から勲章授与ですよ! これで兄さんの凄さが日本中を席巻しちゃいますね♪」
『すっげぇえええええええええええええええええええええええええええええええええ‼‼』
窓ガラスが割れんばかりの歓声だった。
愛希のせいで、教室の騒がしさは三倍になる。
一方、数人の生徒は、教室の隅に集まり、うつむきながらこちらの様子をうかがっている。全員、散々巨大ロボの悪口を言っていた連中だ。
どうやら、教室に身の置き場がないらしい。
可哀そうだとは思うけど、身から出た錆だ。自分たちでなんとかしてくれ。
「ねぇ神明、もしもチーム名を聞かれたら、とりあえず暫定的な名前としてロボフレンズ、または、なかよしカルテットはどうかしら♪」
これが、ボッチを脱却した元ボッチか……。
希望に溢れた皆恋の瞳は、綺羅星が散りばめられているように美しかった。
◆
そして迎えた放課後。
俺、ミア姉、愛希、萌仲、皆恋の五人は、防音の多目的室で取材を受けていた。
新聞社と、軍広報部の女性記者から、札幌での戦いの様子を聞かれ、俺らは話せる範囲で、細かく話した。
続けて、BMに関する質問が飛んできた。
「では次の質問ですが、何故、巨大ロボの、兵器甲冑ブレインメイルは活躍できたのでしょうか? 巨大ロボは実戦的ではない、実用性がない、人型よりも戦いのためにデザインされた戦車や戦闘機のほうが強い、というのは、一〇〇年以上前からネットやテレビ、雑誌で唱えられ続けた論調です。しかし、そうはならなかった」
「はい、その通りです」
ボキャブラリーの少ない萌仲と、失言の塊である変態の愛希と、今日はテンションがおかしい皆恋に代わって、俺が対応する。
「戦車の車高は二・五メートル、ブレインメイル、通称BMの全高は八メートル。背の高い巨大ロボは敵に見つかりやすいと言われていますが?」
話していいことと悪いことは、あらかじめミア姉に言われている。
誤解がないよう、俺は努めて冷静に答えた。
「何もない平原ならそうでしょう。ですが、建物の多い市街戦ならむしろ逆です。BMは建物の陰に隠れて、銃を持った腕だけを出して物陰から敵を撃つことができます。むしろ隠密性は高いと思います」
「なるほど、しかし、正面の面積が広く、攻撃が当たりやすいという意見があります。ホフク前進をすれば良いのかもしれませんが、それなら戦車でいいですよね?」
新聞記者の目が、好奇心で光った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます