第1話 ブルーデイジー

 晴翔は自分の部屋のベッドに座っていた。

「はぁー…」

 晴翔はため息をついた。

「理由は大体わかってるけど、一応聞くがどうした?」

 クラムスは面倒くさそうに声をかけた。

「もう1ヶ月だぜ…由香からなにも言ってこないし。やっぱフラれたのかな…そりゃ、そうだよな。」

 晴翔は不安で仕方なかった。心の奥底では、もうダメなんだろうと諦めていた。

「ダメだろうな。」

 クラムスは晴翔の言葉に答えた。

「そうなんだ…守護神だから、やっぱ由香がどう思ってるかもわかってるんだろ?」

 晴翔は、クラムスの言葉にショックを受けていた。

「え?わかんないよ?」

 クラムスは答えた。

「ん?」

 晴翔は予想外の答えにクラムスを見返した。

「分かるわけないじゃん。別の存在なんだぜ?晴翔の考えてることすらわからないよ?」

 晴翔は驚いて聞いた。

「だってさっき、理由はわかってるけどって聞いてきたじゃん!」

 クラムスはニヤけながら言った。

「あのさー、そんだけ独り言して、ため息してるの見てたら、だいたいわかるだろ」

 晴翔は、もうひとつの疑問についてクラムスに聞いた。

「じゃー、なんでダメってわかるんだよ?」

 クラムスは、続けて答えた。

「類は友を呼ぶって、人間の言葉あるよな?あれって、わりと核心をついてるんだよ。

 人が傍にいたいと思うのは、その人が持つ空間の模様が似ていたり、違っていても一部の模様に共通点があるとか、形は違ってもうまく嵌るとか、何かしら融合性が必要なんだよ。

 晴翔の場合は、今の状態を変えない限りは、模様がぐちゃぐちゃで融合性の"ゆ"の字もない。」

クラムスは淡々と、説明をした。

「具体的に教えて欲しいんだけど、何を変えればいい?」

 晴翔は藁にもすがる思いでクラムスに聞いた。


 クラムスは、ゆっくり晴翔の机の方を指差した。


「え?あっちに何が?」

 晴翔は、どういう意味かわかっていなかった。


「はぁー…、鉢に植えてあるブルーデイジー!萎れて枯れそうだよな?」

 クラムスは残念そうに言った。

「あ、水やるのすら忘れてた…でも、花は関係あるの…?」

 晴翔は、まだピンときていない。


「由香が晴翔に惹かれていた時は、ずっとあの花は元気だったろ。花を大事できる空間を晴翔が持っていたからなんだよ。」


 晴翔はハッとして、すぐに水をやった。

 クラムスは続ける。

「純粋に花のことを考えられないと、いくら水をやってもその花は枯れてしまうだろう。純粋に花が好きなら、少し水をあげすぎても枯れることはないだろう。今の水やりはどっちなのか?よく考える事が大事だぞ。」


 晴翔はつぶやいた。

「なるほど…」


「自分の心と向き合って、純粋な気持ちを取り戻せば、きっと花も元気になるだろう。」


クラムスの言葉を聞き、晴翔はゆっくり頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る