壊崩のベレンガリア ~世界3大悪女筆頭の暴虐皇妃、墜落したら30年ほど巻き戻る~
長篠金泥
序章 暴虐皇妃の最期
第1話 どうしてこうなった
何が悪かった――
どこで間違えた――
どうしてこうなった――
ここ数年、何度も繰り返した問いが、また脳内をグルグル回っている。
自業自得な失敗もあれば、回避不能の事故もあった。
どれもが原因の
ともあれ、
寝不足のせいかストレスのせいか、強めの
ブラウトリア王国の旧首都ニースベルグ――現在はブラウトリア帝国の
その会議室は
それでも、逃げ出さずに会議室にいるだけ、まだマシだと言えた。
一週間前と比べれば、いつの間にやら両手に余る人数が消えている。
国家の滅亡が目前に迫っているのだから、無理もないことだろう。
帝国の
実現不可能な夢想に浸りかけたところで、ヒゲの参謀が
「各地の戦況について、報告いたします」
ロクでもない内容ばかりなのか、顔色がいつも以上に
私が
「イドールとの連絡は途絶、イドールからカナスの線を防衛していた第十七師団は後退しての戦力再編を図るも失敗、ヘンデン城で包囲下にあります。第四師団はギゼー川に
やや早口での報告が終わると、室内は再び
しかし、聞こえてくるのは「何たることだ」「全面敗走ではないか!」「連盟の飼い犬めが」「親衛軍は何故に動かん!」など、動揺一色の発言だらけ。
無能な
すると、あるべき軍勢がいくつか見当たらないのに気付く。
「イドール救援に向かわせた独立混成第五旅団は、どこにおる」
「それは……」
返答に詰まった様子から、大体の状況は想像できてしまう。
しかし、防衛戦の指揮を任された身としては、確かめておく必要がある。
額に汗を
「ハッ! 混成第五旅団ですが……行軍中に消滅いたしました」
「……何なのだ、それは。接敵して撃破された、ということか?」
「いえ、
室内の温度が、不意に二度か三度下がったかのようだ。
この戦況は昨日か一昨日のもの――現在は、より悪化している可能性もある。
もっと会議室が冷えるのを予想しつつ、質問を重ねる。
「南方から侵攻する敵軍の
「ミドゥア伯は……率いる領兵ごと賊軍へ投降、伯爵領の全体が
複数の
私の予想していた以上に酷い状況だ――天井を
苦戦、後退、退却、包囲、壊走、全滅。
失陥、逃亡、降伏、内通、反乱、暴動。
そうした言葉の一つ一つが、帝国が破れつつある事実を容赦なく突き付けてくる。
滅びの道を回避するため、あらゆる手を尽くしていたというのに、本当に……どうしてこうなった。
最大の理由はわかっている――隣に置かれた無人の
かつてはブラウトリア王国の二十二代国王であり、現在はブラウトリア帝国の初代皇帝となったガスパール一世。
革命軍と連盟軍に対する防衛指揮を、皇妃である私と元帥である皇弟に委任――と言えば聞こえがいいが、実際は全てを放棄し帝都の城壁の奥に
この無能にして
ガスパールだけならば、何とか
だが、私が対処すべき「敵」は、あまりにも多すぎた。
皇太子フェルディナントを筆頭に、僅かな例外を除いて自尊心と自己評価ばかりが高い無能揃いで、軍務も政務も任せられぬ皇族とその取り巻き。
ガスパールと子を
そして、際限なく私腹を肥やしながら無意味な政争を繰り広げる、貴族という名の
更には、そんな
連戦連勝に血迷って、ロクな戦略も用意せず際限なく戦火を拡大させる、無責任で不見識な軍人たち。
何よりも手強い相手は、他国から収奪した財貨で豊かな生活を
長い
どうにか危機感を広めようとしても、
大陸西方の
革命軍の
その軍師にして、
更には、帝国の裏面を知り尽くした暗黒街の
そして連盟もまた、多数の名将・勇将の率いる軍勢で帝国の防衛線を次々に突破。
内と外の
僅か半年で十二の都市、二十七の軍事拠点が失陥し、四個軍団が消失。
数度の反攻作戦も全て失敗に終わり、開戦から二年が経とうとしている現在、敵の主力は帝都まで70キロの距離まで到達している。
「この調子では、もう
「そっ、そのようなことは
「客観的な事実に
「それ、は……」
無意味な感情論を口走る、
会議では
見た目だけは有能そうなのが、また
適当な理由をつけて処断しておくべきだったか――などと考えていると、二人の士官に肩を借りた疲労
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新作の連載を開始しました! 自分で書きながら「恋愛とは」と言いたくなる感が否めない導入になっていますが、しばらくするとそれっぽい展開になる……ハズなので大丈夫です。たぶん。きっと。
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