満月の夜
@kumayorinoneko
第1話 狼男
僕、坂井草太は平均的な高校生だ。
顔は普通。
勉強も普通。
運動も普通。
金持ちでもない。
友人は特別多くも少なくもない。
そんな、オカルト研究部に入部しているごく普通の高校2年生だ。
「西ノ森に行こう!」
放課後、教室で変える準備をしていると僕の友人でオカルト研究部部長の、片山健太が突拍子もなくそんなことを言い出した。
「また急だな…また何かの噂でも流れてるのか?」
「実はな…満月の夜に西ノ森で狼男が出たっていう噂が流れてるんだ。 だから今日の夜!ちょうど満月だから行こう!!」
「いつもながら急だな…またデマじゃないのか?そう言って何度も心霊スポットに
行って結局何も起こってないだろ…今回に至っては西ノ森だし」
西の森はそれなりに広い森だが、林道が整備されていて人気のスポットだと聞いたことがある
「お前それでもオカルト研究部の副部長か‼️」
「副部長も何も…部員は僕と健太の二人だけじゃないか」
しかもどうしても部の設立にもう一人必要で幽霊でもいいからと頼みこまれてだ。
押しに負けて入部してしまった僕も僕なのかもしれないが。
「いいから行こうぜ〜、夜には人通りだって少なくなるしさ、今度こそ本当かもしれないじゃないか。」
「本当だったらそれはそれで危ないだろ…」
「いいから行こうぜ〜前回もそうやって言ってたのについてきてくれたじゃないか」
「それは家にまでお仕掛けてくるからだろ‼️
とにかく!今度こそついていかないからな‼️」
そういって僕は健太を振り払うように教室を飛び出し、帰路につくのだった。
次の日の放課後、クラスメイトの木下美咲が話しかけてきた。
「…めずらしいわね。片山くんが欠席なんて」
「たしかにそうだな…欠席連絡も入ってないみたいだし。」
「彼って一人暮らしだったかしら?」
「そのはず。まあそのうち連絡くるでしょ。」
「なんで休んでるんでしょうね」
「心当たりはないなぁ…それで、本題は?」
彼女が健太の欠席理由を気にしているとは思えないが…
「…今週末、映画でも見にいかない?」
「また急だね…」
「そんな嫌そうな顔しないでよ〜べつに奢れとか言わないからさ〜」
「でも…」
「いいから!今週の土曜日!十時!駅前集合!いいわね‼️」
「ちょっ、待ってよ!」
そう言って彼女は僕の静止も聞かず帰ってしまった。
僕は、はぁと小さくため息をつきながら急いで帰る準備をする。
でもどうせ、待ち合わせの時間には駅前にいるんだろうなぁ…と思いながら
校門をくぐった。
今日の夕日はやけに赤く見える。
それを見て再びため息をついてから、小さく呟いた。
「ほんっとうに俺は…押しに弱いな。」
満月の夜 @kumayorinoneko
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