第2部 第5話 (第2部・完)
以来、休日の日にショウが花を一輪を買い求めるようになった。
もちろんスーツ姿ではなかったが、若い男性だ。
それが常連のように買いに来れば、目立つ。
誰か贈り主がいるのだろうか。
そんなことをチアキに尋ねる女性たちも多かった。
友人である度し難い懐古趣味の格好をしたハルカ・モリヤにすら、尋ねられた。
できるだけ目立たない生活を送りたかったチアキにとって、かなり痛手な日々は続く。
地球から人類が立ち去って、墓標になって、3年後。
銀河標準暦130年12月31日。
ショウが真っ白なカスミソウだけの花束を抱えてくるまで続いたのだ。
カスミソウはドライフラワーにしやすい花であり、開花時期もあるものの通年手に入りやすい花だった。
普通は何かの花を組み合わせて使うことが多いが、ボリュームのある花だ。
さほど本数がなくても大きな花束になる上に、バラや他の花に比べて手にした時に軽い。
そのためにプロポーズに使う男性も少なくない。
花言葉は『感謝』、『清らかな心』、『無邪気』、『親切』、『幸福』。
銀河標準言語では『everlasting love(永遠の愛)』、『purity of heart(清らかな心)』、『innocence(純潔)』の意味を持つ。
特に言葉にされことはなかった。
特に気持ちを確かめ合ったことはなかった。
ただ休日に花を一輪だけ買い求める客とその店主という3年間を過ごしたのだ。
大いに途惑いながら、チアキはその花束を受け取ったのだった。
初めて手紙を受け取った時のように。
花束には天国の青のリボンが結ばれていた。
故郷星の空のような、もっと深い意味のあるような色合いのリボンだった。
ショウが楽園を見つけたように、チアキも帰る場所を見つけたような気がした。
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