背中越しの恋――振り向いた先にある未来

託麻 鹿

第1話 「背中越しの恋――振り向いた先にある未来」

プロローグ:背中越しの恋

 高校2年生の春、主人公・真央(まお)は、いつも教室の隅から片想いの相手である修平(しゅうへい)の背中を見つめていた。修平はいつもクラスの中心で笑顔を見せる人気者。しかし、真央は話しかける勇気が持てず、ただ見守る日々を過ごしている。

 ナレーション:

「教室の片隅で見つめるその背中は、真央にとってあまりにも遠く輝いて見えた。憧れと恋心が交差する中、真央は自分の気持ちに気づいていく。」

「その背中は、まるで雲間から覗く一筋の陽光。遠くて触れられないけれど、その光が進む先を追いかけたくなる――そんな存在だった。」


 真央の心の声:

「今日は、話しかけられるかな。でも、もし変な反応されたらどうしよう。」


 修平:

「でさ、この間の試合、マジで熱かったんだって!」(友人たちと笑いながら)


 真央はその声を遠くから聞き、笑う修平の横顔に見惚れる。


第一章:告白の日

 昼休み、真央は教室の隅で黙々とノートを広げていた。隣の席に座る親友の美奈(みな)が、その様子をじっと観察している。


 美奈: 「ねえ、真央。また修平くんの背中、見てたでしょ?」


 真央: 「えっ……そ、そんなことないよ。」(慌てて否定する)


 美奈はニヤリと笑い、真央のノートを指差した。そこには授業内容とは関係のない落書きが広がっている。


 美奈: 「ほらね。修平くんの名前、書いてるじゃん。」


 真央は顔を真っ赤にしながらノートを閉じた。


 真央: 「だ、だって……話しかける勇気なんてないよ。」


 美奈: 「勇気がないって、それじゃいつまでたっても進展しないよ。ずっと背中ばっかり見てるの?」


 真央: 「……だって、遠すぎるんだもん。あの笑顔とか、人気者の雰囲気とか。」


 美奈はため息をついてから、真央の肩を軽く叩いた。


 美奈: 「そんなに見てるんだったら、思い切って話しかけてみなよ。真央だって可愛いんだから、きっといけるって!」


 真央: 「……美奈はいつも簡単に言うけど、私にそんな勇気ないよ。」


 美奈: 「じゃあ、こうしよう。今日、修平くんに話しかけられたら、私がおごってあげる。でも、話しかけなかったら逆に真央がおごりね。」


 真央: 「えっ、ちょっとそれ何の罰ゲームなの!?」


 美奈は笑いながら立ち上がり、真央にウインクした。


 美奈: 「さ、放課後楽しみにしてるからね。」

 

 ある日、放課後の教室で勇気を振り絞った真央は、修平を呼び止めて告白することを決意する。

 真央:

「あ、あの……修平くん、ちょっといいかな?」


 修平:

「え? 真央ちゃん? どうしたの?」(少し驚いて振り向く)


 真央の心の声:

「緊張で心臓が爆発しそう。でも、これを逃したら一生後悔する。」


 真央:

「……好きです。ずっと前から……ずっと。」(息を深く吸い込んで)


 緊張で目を閉じる真央。沈黙が流れ、耳元に修平の優しい声が響く。


 修平:

「ありがとう。俺も、真央ちゃんのこと、ずっと気になってた。」


 真央は嬉しさのあまり飛び跳ねるが、スカートがふわりと舞い上がる。


 修平:

「あっ……えっと、今のは……。」(目を逸らして)


 真央:

「見たでしょ!?」(顔を赤らめながら)


 修平:

「いや、ちょっとだけ。でも、なんか真央ちゃんらしいな。」(笑いを堪えながら)


 お互いに照れ笑いを浮かべ、教室には心地よい沈黙が流れる。


 ナレーション:

「こうして二人の恋が始まった。少しぎこちなくて、でもそれが心地よい。」


第二章:二人のはじまり

 放課後の教室。修平は、仲の良い友人たちといつものように笑い合っていた。友人の一人、健太(けんた)がふと修平の様子をじっと観察して、ニヤリと笑う。


 健太:

「なあ、修平。最近さ、なんかぼーっとしてること多くない?」


 修平:

「え、そうか?」(少し焦りながら目をそらす)


 友人の涼太(りょうた)がすかさず茶々を入れる。


 涼太:

「いやいや、健太の言う通りだよ。授業中も窓の外ばっか見てるし、この前なんて体育の時にボール見逃してたじゃん!」


 健太:

「それ、恋の病ってやつじゃないの?」


 修平は苦笑いしながら手を振る。


 修平:

「バカ言うなよ。そんなんじゃないって。」


 健太:

「嘘つけー。俺、見ちゃったんだからな。この前、真央ちゃんに目が行ってたの。」


 修平:

「……!」(一瞬固まる)


 涼太:

「おお、図星っぽいな!どうなんだよ、修平。気になってるんだろ?」


 修平は少し頬を赤くしながら、しぶしぶ口を開く。


 修平:

「……まあ、ちょっとだけ、な。」


 健太:

「ほら見ろ!で、どうすんの?告白されてOKしたんだから、これからデートとかしなきゃだろ?」


 修平:

「そ、それがさ……なんか、緊張してうまく話せないんだよな。」


 涼太:

「修平が緊張って珍しいな。真央ちゃん、可愛いもんなぁ~。」


 健太:

「じゃあ、初デートはどこ行く予定なんだ?」


 修平:

「……遊園地。」


 涼太と健太は顔を見合わせ、同時に笑い出す。


 健太:

「いいねー!ロマンチックじゃん。でもさ、観覧車とかで何か言わないと、後悔するぞ?」


 涼太:

「それな。頂上で何も言えなかったら、お前の負けな!」


 修平は苦笑しながら、友人たちのからかいを適当に受け流した。しかし、内心では「観覧車の頂上で何を言えばいいのか」と真剣に考え始めていた。


 真央:

「手、冷たいね。ちゃんと手袋してる?」


 修平:

「してるけど、外すと冷えちゃうんだよね。でも、真央ちゃんの手、あったかい。」


 真央の心の声:

「こんなこと言われたら、もっと手を繋ぎたくなっちゃう。」


 ナレーション:

「ぎこちない会話も、二人にとっては新鮮な瞬間。それが、恋の始まりの特権だった。」


 文化祭の準備中、真央は修平と飾り付けをしていた。

 修平:

「この蜘蛛の巣、夜中に見たら怖いよな。」

 真央:

「ふふっ、修平くんでも怖がるの?」

 修平は笑いながら、真央の肩越しに飾りを直した。

「いや、真央ちゃんが驚いたら守ってあげるって。」

 その一言に、真央の胸は高鳴った。


 その言葉に真央は顔を赤らめ、慌てて飾りを直す振りをした。


文化祭当日

 文化祭当日、お化け屋敷には多くの生徒や保護者が訪れ、クラスは大盛況だった。真央は受付を担当し、修平は中の演出係として動いていた。


 美奈:

「ねえ真央、修平くんの演出、すごいね。怖がってる子たちにも優しく声かけてるし、めっちゃ頼りになる感じ。」


 真央:

「そうだね……すごいよね。」(胸が温かくなる)


 途中、真央が修平に声をかけるタイミングが訪れる。


 真央:

「あの、修平くん、少し休憩した方がいいよ。結構頑張ってるみたいだし。」


 修平:

「ありがとう、でも真央ちゃんも受付、大変だったでしょ?差し入れ持ってきたから、一緒に食べよう。」


 二人は受付の隅で、差し入れのドーナツを分け合う。真央はそのひと時がとても特別に感じられた。


 ナレーション:

「文化祭の喧騒の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていった。それは、二人にとってかけがえのない思い出の一つになった。」

 一息ついた教室の片隅で、真央と美奈は休憩を取っていた。真央は修平と過ごした時間を思い出しながら、頬を赤らめていた。


 美奈:

「いやー、修平くん、ほんと頼りになるよね。真央、これからもっとラブラブになりそうだね。」


 真央:

「もう、からかわないでよ!」(顔を赤くしながら)


 美奈はそんな真央を見てニヤリと笑った後、ふと真剣な表情になる。


 美奈:

「ねえ、真央。ちょっと聞いてもいい?」


 真央:

「え? 何?」


 美奈:

「私さ、実は健太のことが気になってるんだよね。」


 真央:

「えっ! 健太くん?!」(驚きながら)


 美奈は苦笑しながら頷いた。


 美奈:

「うん。なんかさ、あいついつも軽口叩いてるけど、たまに真剣な顔する時があるんだよね。そういうの見ると、ドキッとしちゃうんだ。」


 真央は少し考え込みながら、美奈の話に耳を傾けた。


 真央:

「でも、美奈なら健太くんとも上手くいきそうじゃない?明るいし、話しやすいし。」


 美奈:

「そう思う?でも、なんかあいつって、そういうの全然気づかなそうじゃない?」


 真央:

「それなら、ちょっとずつアプローチしてみればいいんじゃないかな?」


 美奈は真央の言葉に励まされたように、にっこりと笑った。


 美奈:

「そうだね。真央みたいに勇気出さないと、恋って始まらないもんね!」


第三章:初めてのデート

 デートの準備に頭を悩ませている真央だったが、ふとした瞬間に美奈が健太に話しかける姿が目に入った。美奈はクラスの片隅で健太と笑い合っている。


 真央の心の声:

「美奈、すごいな……私も頑張らなきゃ。」


 週末、二人は遊園地で初めてのデートをする。


 真央:

「観覧車って、結構緊張するよね。」


 修平:

「うん。でも、こんなに高いところで真央ちゃんと一緒にいられるの、なんか特別だね。」


 観覧車が頂上に近づくと、二人の間に緊張した空気が漂った。

 修平:

「夜景、綺麗だね。」

 真央:

「うん……でも、こんなに高いと緊張するね。」

 修平:

「俺は、今ここにいることの方が特別に思えるけど。」

 真央は驚いて修平を見つめた。その視線を受け止めながら、修平は少し照れたように笑った。


 ナレーション:

「観覧車の頂上で交わされた想い。それは、二人の未来への小さな誓いになった。」


第四章:今日の勝負レース

 真央は少し大胆な行動に出る。

 真央:

「ねえ、修平。今日、何か気づかない?」(チラリとスカートを直しながら)


 修平:

「え、えっと……その……いつもより可愛い?」(視線を泳がせながら)


 真央:

「ふふっ、合格!」(満足そうに微笑み)


 修平の心の声:

「やばい、完全に負けた……。」


 しかし、廊下を歩く途中、ふとした風が真央のスカートの裾をそっと揺らし、真央は慌てて手で押さえる。修平の視線が一瞬その動きに引き寄せられ、すぐに気まずそうに目をそらした。


 修平:

「あ、あの……ごめん!」(少し顔を赤らめながら)


 真央:

「見てないよね!? …ほんとに見てないよね!?」(焦りながら)


 修平:

「いや、ほとんど見てないっていうか、その……大丈夫だよ!」(必死に否定しながら)


 真央はその反応に気を取り直し、ふいに吹き出して笑う。修平も釣られるように笑い出し、二人の間に温かな空気が流れた。


 真央の心の声:

「こんな恥ずかしい瞬間でも、一緒に笑えるなんて……やっぱり、修平くんって特別だ。」


 ナレーション:

「小さなハプニングを通じて、二人の距離は少しずつ近づいていく。それは、二人の恋のステップのひとつだった。」


第五章:二人の夜

 数か月後、二人は初めて二人きりの夜を過ごすことになった。静かな部屋の中、寄り添う二人の間には、初々しさと少しの緊張が漂っていた。


 真央:

「なんか、こういうのって恥ずかしいね。」(照れくさそうに修平を見つめながら)


 修平:

「うん。でも、俺は真央ちゃんとこうしていられるのが一番幸せだよ。」(真央の手をそっと握りながら)


 真央の心の声:

「こんなに大切にされるなんて、夢みたい。」


 修平:

「……ねえ、真央。」(真剣な目で彼女を見つめる)

「これからも、ずっと一緒にいようね。」


 真央:

「うん……私も、修平くんとずっと一緒にいたい。」(静かに微笑みながら)


 部屋に流れる穏やかな時間の中、二人の手はぎゅっと結ばれたまま離れない。月明かりがカーテン越しに差し込み、二人を優しく包み込んでいた。


 ナレーション:

「手と手が繋がったまま、二人は静かに夜を過ごした。その温もりは、互いの想いが確かなものだと証明するようだった。」


 真央が少し瞼を閉じると、修平が優しくその手を握り直す。彼の大きな手の中で、自分がどれだけ守られているかを感じ、真央の心は温かさで満たされた。


 真央:

「これからも、ずっと……ずっと一緒にいてね……。」(彼の手を握り返しながら)


 修平:

「もちろん。おやすみ、真央。」(微笑みながら)


 二人はそのまま手を繋いだまま静かに眠りについた。彼らにとってそれは、初めて心が完全に通じ合った特別な夜だった。


 ナレーション:

「心と心が結びついた夜。それは、二人にとって愛を確かめ合う特別な瞬間となった。」


エピローグ:未来への一歩

 数年後、大学生となった二人。

 二人は同じ大学に進み、卒業間近の秋を迎えていた。


 真央:

「ねえ、修平。将来のこと、ちゃんと考えてる?」


 修平:

「もちろん。真央ちゃんと一緒に、いろんな夢を叶えたい。」(優しく微笑みながら)


 かつて遠く輝いて見えたその背中が、今では隣で同じ未来を見ている。修平と手を繋いで歩くたびに、真央は自分の心に刻まれたあの春の日を思い出していた。


 二人が歩むキャンパスの道の先には、確かに未来が広がっていた。

 二人の未来には、共に支え合い、笑い合い、時に涙を流す日々が待っている。新しい命とともに、家族という物語が始まろうとしていた――それは、真央と修平が共に描く新たなページだった。


 修平はそっと真央の手を握り、彼女の隣で新しい未来を歩む決意を胸に抱いていた。


 ナレーション:

「かつて届かないと思っていた背中が、今では隣で未来を支えている。

 二人の物語は、これからも新たなページを紡ぎ続ける――永遠に咲き誇る愛の花と共に。」


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背中越しの恋――振り向いた先にある未来 託麻 鹿 @Takuma_Shika

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