ウロボロス ――滅亡を添えて――

@SNALEKILL

1.滅亡後

 夕暮れ。夕陽の下のが水平線にかかり、うねる海面に光輝く道を描いていた。海原は夕陽を映してあかく輝き、その表面をはしる波は各々おのおのの裾野に影を落とし、黒い筋を描いては消えることを繰り返していた。

 街は廃墟のように静まり返っていた。人間の姿はなく、代わりに無数の肖像が並んでいた。貝殻と同じ成分でできたそれらは、白くざらざらした肌を晒し、微動だにしなかった。その造形は精密かつ完璧で、一見してまるで生きているかのようだった。

 夕陽を浴びて肖像たちはその身に橙色を映し、そこに差した黒い影が彩りを添えていた。彼らの視線は遠く海へと向けられていた。

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