第2話
私の声は貴方に届いていますか?
今日は宇宙船で流行っている「マホウ」についてお話します。
私の学校や地域では、地球の日本と呼ばれているらしい国を主な観測対象としています。フジヤマ、ゲイシャ、オスシ、などなど。はるか昔から日本に現れる文化を発見しては大ブームを引き起こしてきました。
……いえ、流石に「セップク」がブームになったという地球観測歴史館での展示内容は嘘だと信じたいですが。死んじゃいますよ?死ななかったようですが。展示品に「切っても痛くないセップク用カタナ」というものを見つけたときはすごい技術のムダ遣いだと思いました。
過去はともかく、今一番のブームは「マホウ」なのです。いんたーねっとの分析により、今の地球、日本では、「イセカイテンセイ」を実現し「チート」を得た人々による「マホウ」が取り入れられているというのです。
なんでも、手をかざしてブツブツ何かを喋る?と、水が出たり火が燃えたり風が吹いたりするそうです。なにそれ便利!私たちは愕然としました。一度廃れた文明が、私たちの知らない「チート」を手にしたというのです。ならば、私たちもやらねばなりません!技術で地球の後塵を拝すわけにはいかないのです。
そうして「マホウ」の発見から数年、ついに私たちは「マホウ」を手に入れたのです。私が高校に入る2年前のことですね。私は通学で「マホウのホウキ」を使っています。中学の頃は自転車通学だったのでとても楽になりました。この頃事故が増えてきたということで、もしかしたら免許制が導入されるかもしれません。「マホウ免許」?世知辛いです。
もともと宇宙船の地面には、地球の重力を再現するための人工重力発生装置が至る所に埋め込まれています。「マホウのホウキ」は発生重力をキャンセルしたり方向を変えることで浮遊・推進する仕組みです。これまでも地球でいう「自動車」に相当するサイズの乗り物はありましたが、一人乗りの小型ホウキ、という発想はありませんでした。地球人すごいですね。
そのほか、水や火、風を発生する仕組みについても最終的に人工重力発生装置の出力を変換することで実現されました。地球には「マナ」というエネルギー源があるようですが、宇宙船において、いまだ発見に至っていません。精進あるのみだと思います。
そんな「宇宙船マホウ」ですが、あまりに簡単に利用できると危ないということで現在では地区ごとに導入されたレーティングなど、一定のルールに従わないと使えなくなっています。たとえば、それっぽい「呪文」を宇宙船SNSに投稿し、一定の支持を得られた人に対して呪文を利用した「マホウ」の利用が許可されるようになったのです。
今ちょうど「マホウ」バトルをしている人たちを見かけました。ちょっと覗いてみましょう。
「太陽の光が闇を切り裂き、炎の刃で敵を浄化せよ!光刃の叫び!!」
「永久凍土に煌めく崩壊の刃よ、冷厳なる静寂と共に降り注げ!フロスト・ディスインテグレーション!!」
ドガアアアン!!!パリパリパリ!!!
今ので大体30m四方が崩壊しました。巻き込まれた建物や道路標識が吹っ飛んでいます。中二くらいのマホウ使いたちも吹っ飛びました!
このようにマホウは実現したのですが、防御系の呪文は人気が集まらずにほとんど承認が通っていません。そのため、当面の課題は攻撃マホウばかりで被害が大きくなりがちなことだと聞いています。
あ、街の破壊とか人身事故は大丈夫ですよ。「アンシンアンゼン」「プリ〇ュア」という日本の概念は当然のように実装されており、5分経てばどんな破壊も自動的に復旧します。実は破壊されておらず、見た目だけARの幻影で破壊されているように見えているのでした。
さて、今日はお時間となりました。私もマホウを使ってみたいので良い感じの詠唱を募集しています!貴方のマホウ、届けてください。ーーそれでは、また。
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