博士の衝動
万年ニュートラル
序
『タイムトラベルがしたい』唐突だった。
理由はわからぬが、何故か猛烈に『タイムトラベルがしたい、時空を超えたい』と衝動が湧き上がってくる。
『タイムトラベル』に興味を持つこと、それ自体は今まで何度かあった。
しかし、それは過去を見てみたい、未来を見てみたい、自分が存在しない時代を知りたい、という子供の夢である。
だが、今回は違う、過去や未来に行き、知らない時代を知る為の手段ではなく、『タイムトラベル』が目的なのだ。
何故、この様な衝動が湧いてくるのか?
博士は考えたが、わからなかった。
まぁ、衝動とは得てしてこの様なものなので博士は気にしなかった。
科学者をしていると、このような衝動が湧いてくるのはままあることである。
これまでも、博士はその衝動に従い研究をおこない、いくつものすばらしい成果を残してきた。
新しいエネルギ-や、いくつもの新素材の発見に、その利用方法の開発。
未知のウイルスや、そのワクチン、難病の治療薬の開発。
荒れ果てた土地の再生を行い、水・食糧問題の解決。
数え上げればきりがない程の成果で、世界中の人を救ってきた。
宗教問題以外は。
博士は、世界の技術を、最低でも100年は進め、今世紀どころか、人類史上、類を見ないほどの天才だ。
そんな博士が『タイムトラベル』に興味を持ったのだ。
世界は歓喜した。
『タイムマシン』が作られ、『タイムトラベル』が可能となる新しい時代が始まると。
自分たちは、歴史の転換期にいる。
それを目撃し、体験することができると。
博士次第ではあるが。
そして、少しでも博士の力になろうと、世界中のあらゆる分野の研究者が集まり、話し合いが行われた。
『タイムトラベル』の理論は?
『タイムマシン』の素材は?
『エネルギー』は?
など、内容は多岐にわたったが、何一つ問題は解決せず、むしろ、疑問が増えるばかりで、何も成果は得られなかった。
最終的に、いくら博士でも、30年はかかるのでは?との意見に落ち着いた。
しかし、博士は違った。
研究者たちが、「あーだこーだ」と話し合いをしている間に、天才的な頭脳で、
空想し、妄想し、想像し、極めて高度かつ、感覚的、及び論理的な思考実験の結果、
「何かイケそうじゃね?」という結論に至った。
これが並みの人間では、不可能と笑われるだろう。
だが博士は、とてつもない実績を残した『世紀の天才科学者』、信頼と実績が違う。
誰一人として、疑問に思わなかった。
さすが博士である。
こうして、博士による『タイムトラベルプロジェクト』がスタートした。
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