第27話 激闘?福引会場?(14) パちんこ玉赭ブロー裏モード! 三毛猫HS発動!

 さてさて話を戻そうwww

 スグル先生の胸には、なんて書いてあるのだろう……

 とりあえず……縦読みしてみるか…… 

 なになに……

 

  『尻魂』


 なんじゃそれwww

 だが、事実、スグル先生の身に着けているタンクトップには、厚い胸板によってパッツンぱっつんに横伸びした『尻魂』という文字が書かれていたのである。


 ――ダサい……

 タカトの火照った頬が一気に冷えていくのが分かった。

 だがしかし、タカトはこの100年の恋も一気に冷めてしまいそうなシラケた衝撃に耐えたのである。

 喉の奥からこみ上げてくる「ダサい」という一言を決して言い放つまいとグッと飲んだ。

 もし、ここでその一言を言ってしまえば、もう二度と2等の景品と交換してもらえないかもしれないのだ。

 そう! 二等といえば二等辺三角形!

 二等辺三角形といえば!

 女子のパンツである!

 だから、きっと!二等の景品は女子のパンツで間違いないのだ!

 だが……惜しむべくは、未使用品の新品ということである……だが、まぁ、この際、それは我慢しよう!


 ということで! お待ちかねの!

 交換タイム! オネシャスwww


「ヒョウタンかよ!」

 紙袋から出てきたものを見て間髪入れずに突っ込みを入れるタカトであった。


 軽やかなステップを踏み意気揚々と離れていくスグル先生。

 よほど嬉しかったのだろうwww

 オオカミのような雄たけびを上げているwwww

 うっほぉっぉおぉおぉぉおぉぉぉおおおおおぉ♥♥♥♥

 って、これで……オオカミなのかよwwwまぁ、いいやwww

 そんな背中を見送りながらタカトはビン子に力なく声をかけた。

「なぁ……ビン子、あんなタンクトップよりかは、このヒョウタンのほうが、まだマシだよな……」

 あれだけちゃんと同意して交換したはずなのに、何か腑に落ちないのだ。

 ヒョウタン……

 ヒョウタン……かよ……

 そう、それは、ただの置物である。

 まぁ、確かに酒や水といった飲み物を入れて持ち運ぶことができるといえばできるのであるが、別に、その辺の水をガブ飲みしているタカト君にとっては必需品というほどありがたいものではなかった。

 それよりも、このくびれ……まさに!ボンキュボン!のくびれである。

 しかも、そのスベスベとしたヒョウタンの表面は、まるでオイルを塗ったストリップダンサーの艶やかな肌を彷彿とさせるのである。

 こう考えると確かに、先ほどタカトが当てた3等の『お尻ラブ!』と書かれたタンクトップよりもはるかにエロイ!エロイのだ!

 だが……

 しかし……

 さすがにタカトといえども、このヒョウタンを見ながら一人で自分の玉シャブローから白玉を射出できるほど玄人ではなかったのである。

 ならばせめて、ビン子が「そのヒョウタン素敵よ♪」などと、お世辞でもニコやかに微笑んでくれれば立つ瀬もあるというものなのだが……

 そんなビン子は、まるでタカトの声が聞こえていないかのように辺りをキョロキョロと見回していたのであった。

「あれ? コウスケは?」

 おい‼ ヒョウタンよりコウスケかよ‼!‼!‼!‼!‼!(怒っ!)


 まさに、そんな時である。

「ぎょぇぇぇえぇぇぇぇぇぇ!」

 空を切り裂くような悲鳴がステージの脇の控室から聞こえてきたのだ。

 うん?

 この声には聞き覚えが……あるような……ないような……

 とっさにタカトとビン子は顔を見合わせた。

 もしかして、この声!

「コウスケか!」

「コウスケじゃない!」

 だが、あのコウスケの叫び声、どうやらこれはただ事ではないようだ。

 もしかしたらコウスケの身に何かが起こったのかもしれない。

 心優しきビン子ちゃんは、心配のあまり急いで駆け出していた。

 ――何があったの! 超心配なんですけど!

 一方……

 心狭しタカト君は、心配をあまりすることもなく、好奇心からいそいそと駆け出していた。

 ――何があったの♪ 超楽しみなんですけどぉ~♪

 そんなウッシッシ~といやらしい笑みを浮かべるタカトは、口に手を当て必死に笑いをこらえながらビン子の後を追いかけるのであった。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ~!!!!!」

 タカトは控室に飛び込んだ瞬間、目の前に広がる光景に絶句した。

 タカトのジーパンからはみ出すデカ刑事?! チンではなく粗チン……でもなく、中折れした玉シャブロー。

 その玉シャブローと同様にタカトの意識もまた、正常に反応しなくなったのである。


 控室の中央……

 その畳の上には赤い液体がゆっくりと広がり、いまだその面積を大きくし続けていた。

 そんな広がる赤い海の中心には、一つの人間の姿が浮かぶように横たわる。

 ――も……もしかして……し……死んでいるのか?

 動かぬ体……

 人の死を見るのは、これで二度目……

 そう一度目は、幼き頃、獅子の顔をした魔人によって父の頭がかみ砕かれた時である。

 タカトの深い心の奥底に無理やり抑え込まれていた恐怖が再び呼び起こされる。

 ――怖い……

 だが、これでもいつかはあの魔人を……そして、父の仇を取りたいと思っているのだ。

 しかし、そんなときに限って、いつもあの魔人の冷たい緑の双眸が恐怖を掻き立てるのである。

 いまや、そんな恐怖と相まってタカトの体はガタガタと震え、おびえていた。

 そして、ついにその場でピタリと固まってしまったのである。


 だが、これでもタカトは16歳!

 一応、それなりに大人である!

 もう、あの幼いころのお子ちゃまタカトではないのだ……

 というか、ここは聖人世界の融合国! 城門の向こうに広がるフィールド世界とは違うのだ。融合国内である内地にはそうそう魔人など出てこないものなのである……

 などと、自分に言い聞かせていたタカトは、ふと大事なことに気が付いた。

 ――おいおい……あそこで死んでいるのはコウスケなんじゃ……


 そう、先ほどのコウスケの悲鳴。

 それはまるで命の火が消える瞬間の断末魔のようでもあった。

 さすがに死体を目の前にしてビビっていたタカトであったが、ちょっとはコウスケの身の上を案じ始めていたのである。


 というのも、横たわる死体はオカッパ頭。しかも、立襟の黒い標準学生服を身にまとっていた。

 確か、あのコウスケも……オカッパ頭……だったはず。しかも、留年しているとはいえ神民学校に通っていた学生なのである……

 コウスケじゃん……

 これ……絶対にコウスケじゃん……


 そんなコウスケをしのぶタカトは遠いあの日を思い出す。

 ――不肖タカト……コウスケのために一曲歌わせていただきます……

 マイクを持った脳内タカトは静かに目をつぶって声を張り上げた。


 配達でかよった土手の上……

 二人でじゃれ合った暑い朝……

 君は学生服を脱ぎ捨てて……オカッパヒーローへと変わったね……

 黄金に輝くホーリーウォーター

 激しく撃ち散らしたホーリーウォーター

 君をかすめて土手へと消えた……

 もう……あの頃へは戻れない……

 戻りたくても戻れない……

 君がいた、あの暑い朝……ホーリーウォーター


 タカトの脳内で歌われているので、当然、声は出ていないのだが……

 なんか……その雰囲気だけでもう……

 マジで聞くに堪えないぐらいの音痴なんだとわかってしまう!

 って、お前はジャイアンか!


 というか、あんた! ホーリーウォーターを土手下へと飛ばしたのはタカト君、あなただけでしょうが!

 あの時、コウスケ君が使ったのは、ただのペットボトルの水鉄砲!

 勝手に記憶を改ざんしてコウスケ君も土手下にションベンを飛ばした同類にしないでください!

 ――てへ⁉ バレたかwww


 だが、そうはいってもタカトの奴、日ごろコウスケの事をさんざん馬鹿にしていたのにもかかわらず、どうやらコウスケの事が心配で心配でたまらない様子なのである。

 だから当然に、口には出さないがコウスケの死など全く望んでいなかった。


 だがしかし、先ほどからタカトは何か違和感のようなものを感じていたのであった。

 確かにその横たわる死体はオカッパ頭なのである。

 であるが、しかしなぜか、その唇がおちょぼ口なのである。

 おちょぼ口?

 おちょぼ口……

 おち〇ぽ口……いやぁ~ん♡ 大きい♡

 アホや……絶対にコイツ……アホに違いない……

 見ろ、そんなタカトを見るビン子ちゃんの目が白けているではないか!

 しかし、そんなビン子ちゃんもまた、首をかしげているのであった。

 ――コウスケの唇って……あんな形だったっけ?

 というか……ビン子ちゃん……目の前に死体があるにもかかわらず、タカトみたいに驚かないんですね……

 なんというか……タカト以上に胆力があるというか……


 一方、思いつめた表情を浮かべるタカト君……なにやら落ち着きがなく目がきょろきょろと動き回っていた。


 コウスケ……


 コウスケ……


 コウスケ……


 コウスケ……


 ……


 ……


 コウスケ……の顔ってどんなのだったっけ?


 タカトにとって女の唇ならいざ知らず、男の唇など興味などあるわけもない。

 必死に記憶の中にあるコウスケの唇をたどるのであるが、モンタージュのように合わさるそれが、どうにもアヒルのくちばしやクワガタのような口になってしまうのだ。

 もう、脳内で形成されるコウスケはまさに仮面ライダーに出てくるような怪人そのもの!

 とてもその装いはヒーローなどとは縁遠いものであった。

 ――だいたい、あれは本当にコウスケなのか?

 しかし……入口から見る死体の姿はどうにも遠すぎて、タカトたちからではその顔立ちがよく確認できなかったのである。


 そんな時である。

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ~!!!!!」

 その死体の脇に立つ一人の怪人が、自分両手についた血痕を眼前に広げながら叫び声をあげていた。

 もしかして、こいつこそがジーパン刑事?

 いやいや、違う……さっきも言ったように、こいつの身なりはジーパンというより怪人、いわゆる怪しい人なのだ!

 なぜか、その体にはしっかりと立てた長い襟を持つ赤いマントが羽織られており、しかも、頭には卵のような白い着ぐるみまで乗っていたのである。

 そして、その頭にかぶせた卵のような着ぐるみの真ん中には、ちょうど一つ目小僧の目のようにパックリと開いた空間が大きく口を広げ、その中からコウスケのマヌケが顔が覗いていた。

 もう、このコスプレ!この様相! ここまでくると、どこぞの悪の組織の首領そのものである!


 うん?

 あれ……


 このコスプレをしているのが……コウスケ君?

 この怪人が……コウスケ君?


 な~んだ♪ コウスケ君、生きてたよwww

 もぉ~ タカトぉ~ よく観察しろよwww

 だいたい、今日のコウスケの恰好が学生服なわけないじゃん!

 ガラポンの列に並んでいる時にコウスケに会ったばかりだろwww

 このへんてこな悪の首領の格好でタカトの後ろに福引券を強く握りしめながら並んでいただろうがwww

 お前、もう、忘れたのかよwww

 

 ……だって、仕方ないじゃん!

 タカトだって普通の男の子、恐怖によって視野が狭まることだってあるのだ。

 当然、見たくもない現実というものが存在すれば、視界の脇に入れたくなくなるものなのである……


 というもの、コウスケの手には血塗られた肉切り包丁が一つ握られていたのであった。

 そう……悪の首領のコスプレをした男が血塗られた肉切り包丁を持っている……

 しかも、その手からは真っ赤な血がしたたり落ちているのだ……


 誰が……どうみたって……もう……このシチュエーション……

 殺人犯はコウスケだと思うに決まってるだろ!


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