白川




 ああ、どうしよう。

 やっぱり僕が作ったおにぎりなんて黒田くんも赤星くんも嫌だよね。

 どうしよう。

 黒田くんも様子がおかしいし、赤星くんはいなくなっちゃうし、もう嫌われちゃったかな僕。

「ねえ、これマジで白川が作ってんの?」

 誰もいなくなると黒田くんがやっと僕を見てくれた。

「うん。ごめんね、黙ってて。あの、嫌だったよね」

 怒ってるかな、黒田くん。

「嫌なわけねえだろ! すげえな白川。めっちゃうまいじゃん。いつもありがとうな」

 急に黒田くんの顔が明るくなった。

「え? 黒田くん、嫌じゃないの?」

「なんでだよ。嬉しいに決まってんだろ」

 嬉しい?

 本当に?

 でもまあ、とりあえず、よかったぁ。

「もしかして白川さ、俺が鮭好きって言ったから鮭入れてくれてんの?」

 鮭?

 ああ~、そういえば黒田くん鮭好きって言ってたっけ。

「あ、うん。鮭、好きなんだよね?」

 どうしよう。

 家に鮭ビンがたくさんあったからたまたま鮭が続いてたんだけど。

「好き! ありがとうな白川」

「う、うん」

 黒田くんすごく喜んでくれてるみたいだし、まあ、いっか。

「なあ白川、お願いがあるんだけど」

「え? なに?」

 黒田くんが僕にお願い?

「それ、俺以外の奴に作んないで。って言ったらやっぱおかしいよな、はははっ」

 黒田くん以外に?

「えっと、僕のおにぎりを食べたがるの黒田くんしかいないし、他にあげる友だちもいないし」

 おにぎりはいつも余分に作ってあるけれど、黒田くんくらいしか食べてくれる人がいないのは事実だ。

「そっか、よかった」

 黒田くんがまた嬉しそうに笑っている。

 なんだかよくわからないけど、とにかくもう一つあるおにぎりを食べよう。

 もう僕お腹がぺこぺこだよ。





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