黒田




 なんだよ赤星の野郎。

 俺と白川の二人の時間を邪魔しやがって。

 二人きりになれるのは朝のこの時間だけなんだぞ。

 しかもこいつ、白川のおにぎりを食ってる!

 くそっ、なんか腹立つ。

「もしかしてこのおにぎり、白川が作ってんの?」

 赤星がひとくち食べてそう言った。

「うん、そうだよ」

 嬉しそうにうなずく白川。

「はあ!!??」

 なんだって!?

 俺は思わず立ち上がっていた。

「これ、白川が作ってたのか?」

「そうだよ」

 不思議そうな顔で俺を見上げる白川。

 くそ、かわいいな。

 いや、それどころじゃない。

 じゃああれか。

 俺は毎朝白川が作ってくれたおにぎりを食べてたんだ。

 白川が作った、白川が作ってくれたおにぎり。

 白川が、作ってくれた、俺に、俺だけのために。

「おい! それ返せ!」

 俺は赤星の手から食べかけのおにぎりを取り返した。

「おい、なんだよ黒田!」

 これは俺のために作ってくれたおにぎりだ。

 白川が俺だけのために。

「黒田くん?」

 俺はすぐにおにぎりを一気に口の中に入れた。

 これは誰にも渡せねえ。

「おい、余計に腹へったじゃねえかよ黒田ぁ。くそ、俺購買行ってくるわ」

 赤星め、やっと消えてくれたか。

「黒田くん、あの、大丈夫?」

 やべぇ、口の中に入れすぎた。

 俺は必死で首を上下に動かした。

 心配そうに俺を見ている白川。

 大丈夫だ。

 お前のおにぎりは俺が守ったぞ。

 大丈夫だからな白川。





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