~卒業式~
「お疲れー」
「お疲れ様です。」
「良いの?卒業式終わったんだし、最後はご両親や友達と帰るとかしないで俺と帰って。」
「最後の日だからです。あの日からずっと、こうして毎日のように一緒に帰って頂いたのに、最後が別々は寂しいです。友達とは明日以降でも会えなくないですが、下校だけは先延ばし出来ませんし。今日の下校が卒業式ですね。」
「では、お言葉に甘えようかな・・思い返せば凄い関係だった訳だよね。この関係からも卒業かぁ・・」
「そうですね。お互いの本名も知らないで学校内で声をかける事もなく、ただ一緒に帰るだけの関係でしたからね。顔見知り以上、友達未満みたいな?そんな感じでしょうか。」
「だからこそ、色々な話が出来たのは嬉しかったなー。まぁ、その殆どが下らない話ばかりで申し訳無かったけど。」
「確かに変な話が多かったですね」
「否定してくれないの!?」
「けど、友達との話だけでは知る事も無かった話題が沢山ありましたし、サプライズも嬉しかったですし楽しかったですよ。けど、それも今日で終わりなんですよね・・分かっていても寂しいです。」
「今日が最後だから聞きたい事があるんだけど・・聞いて良い?」
「なんですか?プライベートサイズの質問とかでないなら、可能な限りお答えしますよ。」
「あの日、なんで俺と一緒に帰る為に声をかけてきたのかずっと気になってたんだ。確かに知らない相手同士の方が話しやすい事はあると思う。けどウチのような1学年1000人近くいる学校でなら、顔見知り以外で一緒に帰るだけなら誰か他にいなかったのかな?思って。」
「・・・それは・・」
「正直、転入したばかりの時で不安で一杯だった時、こんな可愛い娘に声掛けて貰え、一緒に下校出来る様になったのは嬉しかった。ただ、その反面、不安がなくも無かったんだ。」
「?」
「もしかしたらハニートラップなのかな?って心の何処で常に警戒してた。普通に考えて話が上手く行き過ぎてる、もしかしたら弱みを握られたり、身体の関係を持ちかけられて逃げられない様にして、犯罪の片棒を担がされるんじゃないのかな?って。友達として距離が近づくのが嬉かった反面、万が一を考えたら凄く怖かった・・本名を含め、自分の事を必要以上に話をしなかったのは警戒していたから。
これを話すか否か迷ったけど、黙ったままで終わるのは嫌だから話しとく。本当にごめん、ずっと疑った気持ちを持ってて。」
「・・・」
「・・・」
「一目惚れ、信じますか?」
「え?」
「声をかけるちょっと前、下校時に貴方の事を初めて見た時に
『この人の事を知りたい、ずっと一緒にいたい』
って強く思ったんです。一目惚れ、だったのかな・・けど、クラスも分からないし接点もない。いきなり告白なんかしちゃって仮に付き合ったにしても、長続きしなかったら意味がないですし。まずは何か接点が欲しくて、半ば勢いで声をかけたんです。」
「そうだったんだ」
「最初は本当に一緒に下校するだけの関係で終わりかなって思ってましたが、色々な話をしてる内にあの直感は正しかったんだ!1歩でも良いから今より先の関係に進みたいって願う様になってました。学校でも気がついたら貴方の姿を探してましたし、体育祭や修学旅行で見かけた時、声をかけたくても我慢するのが辛かったです。だからサプライズは凄く嬉しかったですし、私からも距離を近づけたくて色々と・・ただ、理解して分かっていても、ハニートラップをずっと疑われてたのはショックでした。」
「謝って済む話じゃないけど、ホントにごめん」
「では許してあげる代わりに、私の我儘を1つだけ許してくれますか?」
「俺に出来る事なら。」
「本当に?」
「嘘はいわな!?・・・・・・」
「・・私は初めてでしたよ?迷惑だったらごめんなさい。」
「そんな大事な相手、俺で良かったの?」
「一緒に下校して頂いたお礼と、初恋の形のない卒業証書です。長い間、楽しい思い出を本当にありがとうございました。それじゃ」
「待って!俺・・」
この話がエンドです。何時筆が止まっても良いように、予め結末を公開しておきます。この後の2人がどうなったかは、読む方の想像におまかせする形にしておきますが、完結させる時は2通りの後日談を。
次回から本格始動、2人の毎日の帰り道での会話・サプライズの事も何処で書きたい思います。
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