一緒に帰りませんか?

ロキ-M

きっかけと最後の日

~始まり~

ー放課後・校門ー

「あの・・」

「えっ、俺の事?」

「そうです。初対面の方にこんな事をお願いするのは恐縮なのですが、良かったら私と一緒に下校して頂けないでしょうか?」

「えっと・・話が全く見えないんだけど。俺、転入したばかりで学校の事もまだよく知らないし。もし話の内容が部活とかバイトの勧誘だったらお断りね。」

「何も知らない方だからです。お互いに何も知らない人同士の方が、気兼ねなく色々なお話が出来るかな?思ったのですが・・やっぱり、いきなりこんな話をされても困りますよね、ごめんなさい」

「いや、いきなりでびっくりはしたけど嫌じゃないよ。俺、転入したばかりで何も知らないし、友達どころか話相手もいないし。良かったら色々と教えて貰えたら助かるな。」

「私は新入生なので何処までお役に立てるか分かりませんが、分かる範囲で良ければ。」

「え?って事は同い年なんだ。落ち着いた雰囲気だし、てっきり先輩かと思ってた」

「そんな大人びて見えます?そんな風に言われた事がないから、何だか恥ずかしいです」

「女性に綺麗とか可愛いって言うのは失礼なのかも知れないけど、こんな可愛くて綺麗な人と下校出来るとか・・夢?そうだこれはきっと夢なんだ!いきなり目が覚めてててて・・って痛いんだけど。」

「目が覚めましたか?」

「夢じゃないんだ・・いや、今まで女友達どころか、女性とまともに話をした事も無かったから信じられなくて。」

「私も似たような感じですよ。こうして話をしてるだけでも心臓バクバクしてますから。」

「本当に?とりあえず話は帰りながらしない?周りの視線がちょっと気になるし。」

「そうですね、確かにここではちょっと恥ずかしいですね。」


「そういえば・・通学は徒歩?電車?バス?それによって何処まで一緒に帰るのか変わってきちゃうけど。」

「私は電車です。」

「俺は徒歩だから駅の方には行かないけど、折角だし一緒に行くよ。」

「ご、ごめんなさい。声かける事しか考えてなくて、そこまでは考えてなくて。無理しないで下さい、私の我儘ですし。」

「迷惑じゃないよ、むしろご褒美だから。今日一緒に帰れるだけでも、この学校に来て良かった思うよ。」

「そうですか?」

「こんな可愛くて綺麗な人から声掛けられて、更には一緒に下校出来るってんだから。そりゃ多少遠回りしても送りたい思うよ。」

「では、お言葉に甘えちゃいますね。」

「そうそう、素直が1番だよ」

「もしかして・・何か下心があったりします?」

「全くない!と断言出来ないのが悲しいなぁ・・どうしても少しは。迷惑かける様な事はしない様にしたいけどね。」

「そこはもう少し狡くても良い思いますよ。」

「良くも悪くもなかなかねぇ・・って言ってる内に着いちゃったね。思ってたよりも時間かからなかったね。」

「そうですか?朝は友達と一緒だから気にならないのですが、帰りが1人の時は長く感じてたのですが。」

「もしかして歩くペースが早かった?ごめん、そこに気づかなくて。」

「それは大丈夫でしたよ。けど、折角ならもう少し色々とお話したかったです・・

もし差し支え無ければ、明日からも一緒に帰って頂いて良いです?友達は部活やバイトで帰りの時間が合わないから1人で下校してるのですが、1人で下校は過去のトラウマからちょっと怖くて。お互いに都合ありますし、無理のない範囲で構わないのですが。」

「俺で良ければ喜んで。余程の事がない限りは直帰だから、大丈夫だと思うし。ただ、急用とかで待ち合わせ出来ない時に連絡が出来ると助かるんだけど。」

「だったらアプリの友達登録しませんか?」

「それは助かるけど・・1つお願いして良いかな?」

「なんでしょうか?」

「連絡はあくまでも下校の待ち合わせに関してのみで、日常会話とかは一切なしで。後、知らない者同士だし本名も伏せたままで良い?」

「・・構いませんよ。ホントに何も知らない同士で帰る事になりますね。自分から言い出した話ながら、ここまでは予想外でした。」

「ごめんね。」

「無理を言ったのは私ですから気にしないで下さい。今日は色々と我儘聞いていただきありがとうございました。明日からよろしくお願いします。」

「こちらこそ楽しみにしてるから。じゃ気をつけて帰ってね。」

「お互いにですね。それでは失礼します。」

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