主人公に断罪される悪役に転生したけど、関わらずにのんびりと過ごしたい
おとら
第1話 悪役王子に転生
成人を迎え、国王である父上に呼び出された俺は確信する。
どうやら、愚図である兄に変わり、俺を王太子に据えるようだ。
類稀なる剣の才能、稀少な氷魔法の使い手である俺の方が王太子に相応しい。
「父上、話とは何でしょうか?」
「うむ……お主には来週から王都にある高等学校に入ってもらう」
「……どういうことです? 何故、俺が学校などに?」
王都にある高等学校は確かに由緒ある場所だ。
だが、そこは基本的に家督を継ぐことのない者が通う場所。
故に、俺が通う道理はないはず。
「簡単な話だ……王太子は、兄であるユーリスに決定した」
「っぁ………!?」
その言葉を理解した瞬間、俺の中で怒りがこみ上げる。
同時に——凄まじい痛みが頭を襲う!
「お主が納得できないのもわかる。確かにお主は優秀だ。剣の才能と希少な氷魔法を使えるし頭も良い。だが、それだけでは人はついてこないのだ」
「………」
……そうか、そういうことか。
この場面は、前世で見たことがある。
俺は顔を下に向け、すぐに状況を把握することに専念。
これ、初手で詰む場合あるじゃん。
「お主は傲慢さを隠しきれず、それに人の気持ちが理解できん。戦争中であれば考えたが、幸い今は平和だ。ここはユーリスを王太子とする……すまんが、わかってくれ」
「はい、父上」
俺は顔を上げ、フレイヤ王国の国王であるアルバート王に向き合う。
今は、ここを無事に乗り切らなければ。
「いや、お主の言い分も……なに? わかったのか?」
「はい、もちろんです。兄上を王太子とし、いずれは俺は何処かの家に婿に入るか、もしくは公爵家を新しくたてるということですね?」
「う、うむ、そうだが……」
父上が戸惑うも無理はない。
本来の俺なら、ここで暴れまわるはずだ。
そう、悪役王子たる俺なら。
ともかく、俺は一刻も早くこの場を離れたい。
「父上、話は終わりでしょうか? それでしたら、部屋に戻って準備をしようかと」
「……何を企んでいるのだ?」
「いやいや、別に何も。それでは、失礼します」
怪訝な表情を浮かべる父上を背にし、俺は足早に部屋から出て行く。
そのまま無心で歩き続け、自分の部屋に入って……大きく息を吐いた。
「はぁ〜〜〜生き残ったか……最初の破滅フラグを。何も、このタイミングで記憶を取り戻さなくても良くない?」
よし、まずは状況を確認だ。
理由はわからないが、俺はアガレスト学園というRPGの世界に転生したようだ。
それも主人公と敵対する悪役王子、リオン-フレイヤとして。
他者を見下し、自分が一番偉いと思っているキャラだ。
前世で姉がやっているのを見たことがあり、姉がガチファンだったので覚えている。
「ただ、ゲーム自体はやってないから詳しくはわからない。でも本来の流れだと、俺はあの場で破滅の一歩を踏み出すはずだった」
話の流れとしてはこうだ。
あそこで王太子に選ばれなかったリオンは、その場で激昂して暴れ出す。
そして近衛騎士団長に取り押さえられ、独房室に入れられる。
その間に、兄が正式に王太子を継ぐ流れだったはず。
「暴れ回ったのが後押しとなり、俺の立場は悪くなっていく。その後荒れに荒れ、それは学校に入っても変わらなかった」
むしろ、もっと酷くなり……他者をいたぶるような真似も。
平民や奴隷を痛めつけたり、それこそ主人公であるアークを学園から追い出そうとしたり。
アークは平民上がりなのに、由緒正しき学園にいるのが気に食わなかったのだろう。
それに次々と魅力的なヒロインに好かれていくのも。
「そうだ……そして、人を惹きつけるアークは味方をつけていく。俺の妹から始まり、俺の幼馴染、学園の姫騎士、教会の聖女と。次第に学生達にも電波していき、それは大きな渦になっていく。貴族と平民が分け隔てなく過ごせる、平和な世界へと」
当然、それを黙って見ているリオンではない。
あの手この手を使い、アークの邪魔をする。
しかし、そのどれもが防がれてしまう。
しかも、暗殺者や闇ギルドを使ったのに。
「それを国王達にもばれて、廃嫡される。そして、次第に追い込まれたリオンは禁忌を犯す」
兄である王太子、国王である父を殺し国を支配する。
そして、アーク達を反逆者に仕立て上げるのだ。
だが、それを見事に打ち砕かれることに。
「そして最後には……破滅する」
処刑台に立たされ、その全ての悪を背負って断罪される。
それにより男の王族もいなくなり、アークが国王の座に就く。
それでヒロイン達と結ばれてハッピーエンドってわけだ。
「俺は、そのための駒ってわけだ……ふざけるな」
訳もわからないまま転生して、既に破滅が決まってるなど許容できるわけがない。
破滅フラグを回避し、俺は自分の好きなように生きてみせる。
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