竜に嫌われた俺が竜騎士学園に入学したら、竜人少女と運命を共にすることになった件
鬼の子マイク
第1話 命からがらの旅立ち
霧が立ち込める森の中、鋭い咆哮が木々を震わせた。地面を蹴る重い足音が迫りくる。それに追われる少年は、息を切らしながらも振り返ることなく走り続けていた。
「うわっ、勘弁してくれよ! 俺、そっちのエリア荒らす気なんてないんだけど!」
ライド・エヴァンスは背中に背負った荷物を抑えながら必死に足を動かす。彼の後方では、黒い鱗を持つ野良竜が鋭い爪で地面を裂きながら追いかけてきていた。
「まったく、なんで俺だけこうなるんだよ!」
怒鳴るように叫んでも、返ってくるのは竜の咆哮だけだった。竜に嫌われる体質を持つ彼にとって、この手のトラブルは珍しいものではない。それでも、この状況はさすがにまずい。
「逃げ切る方法は……うーん、あれしかないか!」
目の前に現れたのは急な崖。足を止める間もなく、ライドは勢いよく崖際まで駆け上がった。そして――
「よし! ここまで来たら、やるしかねえだろ!」
自分を奮い立たせるように叫ぶと、勢いよく崖を飛び越えた。
数時間前、ライドは小さな村の出口に立っていた。見送りに集まった村人たちは、口々に彼を励ます言葉をかけている。
「ライド、気をつけてな。お前が村の誇りなんだからよ」
「竜騎士になって、帰ってきたら一杯奢るぞ!」
村の長老も杖を突きながら、静かに微笑む。
「ライド、お前ならやれるさ。竜騎士になって、村を守る立派な男になるんだぞ」
ライドは肩に背負った荷物を軽く叩いて笑顔を見せた。
「もちろん! 俺が竜騎士になって、村にでっかい竜を連れて帰ってくるからな!」
その言葉に村人たちは明るく笑い声を上げたが、内心では不安が渦巻いていた。竜に嫌われるライドが竜騎士になれるのか――それを誰もが心の中で問いかけていた。
空を切る風の音が耳元を駆け抜け、ライドは崖の反対側の木々に飛び込んだ。
「うわっ、痛ってぇ……でも、死ぬよりマシだ!」
枝を掴みながら体勢を整えると、なんとか崖の下へと降りていく。
野良竜たちは崖の向こう側で咆哮を上げているが、追ってくることはなかった。どうやら縄張りを超える気はないらしい。
ライドは木の陰に座り込むと、大きく息を吐いた。
「はぁ……こんなんで学園に着けるのかよ……いや、着ける! 絶対に!」
彼は拳を握りしめて立ち上がると、再び歩き出す。疲労と傷だらけの身体に鞭打ちながらも、その顔にはどこか希望に満ちた笑みが浮かんでいた。
数日後、ライドはようやく目的地にたどり着いた。目の前にそびえるのは、巨大な石造りの門。その先には壮大な「アストレア竜騎士学園」の建物が広がっている。
「おおっ、これが……竜騎士学園か!」
その壮観さに一瞬言葉を失うが、すぐに拳を握りしめた。
「よし、ここからが本番だ!」
ライドは胸を張り、大きな門をくぐった。その先に待ち受ける運命も知らず、ただ明るい未来を信じて。
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