間幕 刹那、少年と機兵

「ユキさんッッ!!」

 揺らぐ視界に映るのは、こちらに向かって必死に叫ぶユキさんと彼女を断ち切ろうとする鋭い刃。

 ――逃げて

 その叫び声と共に視界が暗転する。

 すぐさま起き上がってユキさんを振り返る。

 そこには歪な形をした機械とその目の前でぐったりと倒れるユキさんの姿があった。

 すかさず胸元からナイフを取り出し機械に投げつける。

 刃が振り下ろされればユキさんは無事でいられない。猶予はほんの数秒。

 投げつけたナイフは今にも振り下ろされようとする腕の関節に突き刺さった。

  ――どうかあと数秒だけ止まっていてくれ。どうか、お願いだから動かないでくれ......

 心の中でそう祈りながら全力で床を蹴る。

 ほんの数メートルの距離がとても長い。まるで世界がスローモーションになってしまったようにもどかしい。

 あと十数センチで手が届く――そう思った瞬間。

 

 金属が砕ける音がした。


 振り下ろされる刃も自分が伸ばす手も。

 ゆっくり、そして確実に。

 死。

 死が迫る。

 この旅の終着点が目前に映る。

 二人の終わり。


「......ごめんなさい」

 旅は、ここで終わり。



 ――衝撃、暗転│

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