第1章

第3話

東日テレビの玄関前には、西野智の顔写真の団扇を持った女子中高生達が、車の到着を今か今かと待っている。

其処へ一台の車が到着した。

後部座席のドアが開くと、顔立ちのカッコいい少年が降りて来た。

西野智である。

「きゃー!智、素敵!」

「智ー!こっち向いて!」

ファンの女の子達が押し寄せて来て、マネージャーの橋本は、警備員達と共に智を守るように盾になっている。

智はファンサービスに笑顔を見せた。

女の子達から歓声が上がる。

智はマネージャー達に守られて、そのままテレビ局の中へと入って行った。


智は不機嫌だった。

「お前、俺が高校生だって事忘れてるんじゃないか?」

「仕方ないだろう。新しいドラマの主演が決まったんだから。高校生5人の切ないラブストーリー」

橋本清都は励ますように言った。

「顔ぶれも豪華だ。西条和樹、菊池真凜、河島優里亜、佐倉綾音だ」

「ふーん」

智は興味なさ気に言った。

「で?いつ学校に行けるの?」

「5日後までは無理だな」

「全く?1時間も?」

「無理言うなよ」

橋本は困った顔になった。

「その代わり日曜はいっちゃんと山登りさせてやるから」

橋本がそう言うと、智は漸く機嫌を直した。

いっちゃんとは親友の矢野一色の事である。

智は矢野と山登りに行くのが、何よりの楽しみだった。

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