幼馴染の君がアイドルになった。β
@Contract
第1話 明けない夜はない
「次のニュースです、アイドルの赤星 空さんがアイドル活動一時の休業を発表しました。理由として学業に専念する為とのことです」
「自身のブログでもこれについてコメントしており、今まで振り返ることなく一生懸命アイドル活動をして、沢山のファンの方のおかげで色んな経験をさせて頂き毎日がとても輝いていました。しかし一度ここで足を休め将来についてもう一度…」
街中にあるテレビから視線を戻して再び自宅に歩き始める。
一時は彼女の追いかけてライブに行ったり、放送されているドラマに出演することがあれば見ていたりしたがそれももう昔のことだ。
彼女のグループは最初の方は小さなライブ会場で始まりそれすらもスカスカで、どんなに小さな地方のショッピングモールでもできる機会があれば、どこまでも行きライブをやっていた。
どこのイベントかは忘れたがメンバーのMCが面白いとネットでバズって少しずつライブにも人が来るようになり、いつの間にかみんな彼女達の作り出す空間の虜になり着実にファン数を伸ばしていった。
そしてつい最近では横浜か東京のドームでライブをするまでになったらしい。
傲慢ではあるが嬉しくはあるが何だか自分達が昔から彼女を支えて、自分達の物だったはずのグループがいつの間にかみんなの物になってしまったみたいで嬉しくも少し寂しい。
まあもうファンを辞めた身としては、ただの厄介オタクのやっかみではあるのだが。
熱い日差しに照らされながら慣れた足取りで人混みを搔き分けながら自宅へと向かう。
「流石に土曜日だと人が多いな」
コンビニで買ったジュースとお菓子が入った袋を握る手にジワリと汗が滲む。
しばらくすると前を歩くカップルの会話が聞こえてくる。
「ねえねえニュース見た?空ちゃんアイドル辞めるんだって」
「やめるんじゃなくて一時休業だよ。売れっ子だろうが高校生だし色々忙しいんだろうな」
「えーなんか詳しくない?もしかして空ちゃんのファン?」
「そうゆう訳じゃねえけど、若いのによく頑張ってるなって思ってさ」
「もうアミのことは嫌いになったんだ」
「そんなはずないだろお前が一番よ」
そう言うと彼氏と思われる男性は彼女を抱き寄せる頭を撫でる。
「もう恥ずかしいよユウ君」
うるせえよ、俺の方がはずいよユウ君。
ただでさえ地球温暖で暑いのにこれ以上温度を上げようとしないでくれ。
つーか彼女いない男の前で見せつけてくるとかこれは何かの犯罪だろ?
公害汚染罪とか公序良俗違反違反とかムカつく罪で捕まんねえかな。
つうか取り敢えずそこの電柱に頭打って少しは頭直しておけ。
とすさんだ心の声を内にしまい、角を曲がりマンションに入る。
俺の住む部屋は4階にあり、眺めもまあまあな物で部屋も一人暮らしなので余裕があり正に理想の住宅居になっている。
エレベーターに乗り部屋の前まで行き鍵を回し、ドアを押す。
ん?
ドアはガチャガチャと音をたてるだけで一向に開く気配が無い、部屋を間違えたと改めて周りを確認するが間違いなくここは俺の部屋だ。
しまった、出るときカギを閉め忘れたかもしくは泥棒か。
何かあってもすぐに対応出来るようにスマートフォンを片手に恐る恐るドアを開ける。
「お帰りなさいませご主人様、久しぶりだね!」
すると目の前にはメイド服を着た赤星 空が笑顔を浮かべて俺を待っていた。
普段使うことのない頭を必死に働かせ、何とか様々な理由を考えるが何一つとして分からない。
口を開け啞然とする俺に痺れを切らしたのか少し困惑した目で見つめる。
「えっとー大丈夫?」
彼女の顔と声にあの背丈は間違いなく本人だろう。
子供の頃から見てきた俺が見間違う訳がない、しかしその彼女はここにいるはずなんてない。
赤星 空はもう自分の手の届かない場所に行ってしまい、僕と彼女の関係はもう何年も前に終わったはずなのだ。
そうか俺はこんなにも可愛い女性とゆう物に飢えすぎてこんな幻覚まで見えるようになってしまったか。
確かにアマガミ徹夜でやればそうもなるよな、うん散歩してこようか、ただこんなに幻覚なら嬉しいし最期に同棲自分でも味わって終わりにしよう。
僕はいるはずのない空に向かってとびっきりの笑顔を浮かべる。
「行ってきます!」
名残惜しさを振り払うようにフルスイングで扉を閉めて散歩に出かける。
何か扉から声が聞こえる気がするが、時期に聞こえなくなるだろう。
「えー…」
部屋に残された少女は1人困惑した。
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