覚醒者能力検査2

「マサキさん!」


 マサキが大体書類も書き終えたところでレイが来た。


「どうでしたか?」


「さあな。結果を見るまでは分からないな」


 マサキの結果は大体分かっている。

 そんなに振るわないはずなので結果発表も楽しみではない。


 レイの方は期待できるだろうからそっちの方は楽しみである。


「ゴブリンって結構気持ち悪いんですね……」


「戦うのは問題なかったか?」


「はい! マサキさんに事前に教えてもらっていたので少し緊張しましたけど戦えました。五十体ぐらいはいけたんですけど意外と難しくて……」


「それぐらいいけたなら上出来だと思うぞ」


「本当ですか? なら嬉しいです!」


 五十ならかなり良い方といったところ。

 多いとも言い切れないが初心者にしてはやった方だ。


「ウサミマサキさん、結果が出ました」


 のんびり会話しながら待っているとマサキが呼び出された。


「ウサミマサキさんの覚醒者能力検査の結果ですが現在の能力がEランク、潜在能力がFランクのEFクラスになります」


「そうですか」


「そう気を落とさないようになさってください」


 覚醒者の能力は二つに分けられる。

 覚醒者能力と潜在能力である。


 覚醒者能力とは現在の能力で、モンスターを倒すと倒したモンスターの魔力を吸収して覚醒者は成長するので検査する時によって強くなっていることがあるために変動することもある。

 潜在能力とはこれからどれだけ強くなるかの可能性を表すものになる。


 潜在能力が高ければ高いほど覚醒者は強くなる可能性を秘めているのだ。

 そしてそれぞれの能力はSからFに分けられている。


 マサキの覚醒者能力はE。

 これは下から2番目である。


 潜在能力はF。

 これは1番下である。


 よって覚醒者そのものの能力としては覚醒者能力と潜在能力を合わせて表してマサキの場合はE Fクラスであった。

 現在の能力低く、将来性もない。


 言ってしまえばマサキは弱いと告げられたのと変わりがないのである。

 分かっているので淡々と受け入れたマサキであったが覚醒者協会の職員は圭が落ち込んであるのだと勘違いした。


 現在の能力はともかく潜在能力が低いとこれから頑張っても伸びないということで、覚醒者として活躍することは難しい。

 覚醒したと思ったら将来性はありませんよなんて言われて自暴自棄になる人も中にいる。


「ええ、大丈夫ですよ」


 正直多少は落ち込むけど自暴自棄になどなりはしない。

 それに知っているのだ。

 

 今の能力が全てではないことを。


「こちらが覚醒者証となります。無くされましたら再発行には……」


 身分証としても使える覚醒者証を受け取る。

 カード型になっていて免許証なんかと近い。


 再発行なんかの説明を受けてから覚醒者証を受け取って部屋を出るとレイと入れ違いになる。


「レイのクラスはどうなるかな?」


 ゴブリン五十匹程度なら初心者としてはよくできた方だが今の覚醒者能力として考えるとそんなに高く評価はされないだろう。

 けれどレイは将来強くなるので潜在能力は高いことは分かりきっている。


「DSとかCAクラスになるのかな?」


 五十匹も倒せたのなら覚醒者能力がFとかEということはないだろう。

 そしてレイの将来のことを考えれば潜在能力も絶対に高いのでAやSが妥当である。


「マサキさん、マサキさん、マサキさん!」


「ああ、聞こえてるよ」


「聞いてください!」


「聞いてるよ」


「なんと、私CSクラスだったんです!」


 もう行ってもいいと言われたがマサキはレイが来るまで待っていた。

 やや顔を上気させて出てきたレイはマサキを見つけると珍しく満面の笑みを浮かべて駆け寄った。


「そりゃすごいな」


 マサキも驚いた。

 初めての検査でCならば上等な方だ。


 さらには潜在能力はSランク。

 潜在能力がイコール最終的な覚醒者能力ではないけれど Sランクの潜在能力があればSランク覚醒者になることはほとんど間違いない。


 しかし腑に落ちないこともある。

 このような能力があることは分かっていたけれど、CSクラスの能力なら回帰前でもかなり注目されたはずである。


 当然大きな覚醒者ギルドもレイを手に入れようと動く。

 滅多なことがなければ大きな覚醒者ギルドに入るだろうにマサキが回帰前に出会ったレイは大きなギルドと関わりがあまりなかった。


 なぜレイは注目もされず大きな覚醒者ギルドに入らなかったのか疑問に思ったのである。


「どうですか! マサキさんの、力になれそうですか?」


 覚醒者証を口元に当てて上目遣いにマサキを見上げるレイは期待したような目をしている。


「もちろん」


 レイの力はマサキの力になってくれるどころか回帰前は人類のための力にすらなってくれた。

 今回はもっと大きな力に育ててやる。


 そしてレイ自身が生き残れるようにするのだとマサキは思った。


「それじゃあ行こうか。運動したしお腹空いたな」


「そうですね。何か食べていきましょうか」


 しかしマサキは忘れていたのだ。


「潜在能力Sランクの人ですよね! うちのギルドはどうですか!」


「給料保証、福利厚生、装備の支援もします! うちのギルドの話を聞きませんか?」


「契約金も惜しみません。どうか我々のギルドをご検討を!」


 自分が低クラス覚醒者であったために経験がなく頭からすっぽりと抜け落ちていた。

 覚醒者協会の受付などがあるホールに出てきたマサキとレイは多くの人に囲まれた。


 正確にはレイが囲まれて、マサキは巻き込まれたのである。

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