第16話 戒厳令施行決定を受けた革命指導者たちの議論
一九一八年二月某日 東京・上野公園内の隠れ家にて
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帝国政府はついに戒厳令の発動を決し、京畿一帯に軍の力をもって蜂起を鎮圧せんと動き出した。これを受け、革命の指導者たる幸徳秋水、片山潜、山川均、ロシアから派遣された革命家アレクセイ・イヴァノフ、農民代表の田中庄吉、労働者代表の大村清太郎、軍の内通者・中村中尉、僧侶代表の釈円信、学生代表・井上昇平、文化人代表・尾崎光子、ロシアからの軍事顧問であるボリス・カラーニン少佐が一堂に会し、今後の策を討議する場が設けられた。
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幸徳秋水
「戒厳令を施行せんとする帝国政府の決断、我らにとってもまた、試練の時が訪れたる。しかし、此の弾圧に恐れてはならぬ。今こそ民衆の力を結集し、共に立ち上がらねばならぬ。」
片山潜
「然り、秋水。我らの力は決して数に非ず。此の革命の炎を灯し続けんとする志を持つ者たちが、隠れ家ごとに集まり、東京全域に浸透しつつある。戒厳令など、民の意志の前に屈するは必定にてあろう。」
山川均
「されど、彼らの兵力は圧倒的にございます。戒厳下に於いては、軍の動員が速やかに行われること、我らも承知しておる。帝都内の民を如何にして鼓舞し、蜂起の勢いを維持するか、然るべき手立てを講じる必要がありましょう。」
アレクセイ・イヴァノフ
「同志諸君、ロシアに於いても、我らは帝国の圧力をものともせず、労働者と農民とが結束し、軍の力すらをも覆し得たり。民衆の間に更なる連携を深め、地下組織を活用しつつ、軍部の弱点を突く策を進めるべきかと考えまする。」
田中庄吉(農民代表)
「我ら農民も、この京の地に集いたる多くの者が、既に都市部にて働き、労働者の家々にも連絡を持っておる。農村からも物資の供給を行い、都市の同志らを支援致す所存にて候。」
大村清太郎(労働者代表)
「労働者も恐れず、工場にて連携を強め、此度の戒厳令にも屈せぬ覚悟を持ちて立ち向かう覚悟で御座る。組合の仲間らが既に地下に潜り、軍への抗議行動を組織し、民衆と連帯せんと動き始めておる。」
中村中尉(軍の内通者)
「軍内部にも、我らの理想を理解する者が徐々に増えております。然し、戒厳令発動により軍の規律が厳重に維持されることは必定に御座る。同志らが行動を起こすには、決起の場を選び、我ら内通者が策を巡らさねばならぬ。」
釈円信(僧侶代表)
「我らの信仰もまた、此の苦しむ民のためにある。民衆の間に『今こそ立ち上がる時』との信念を広め、戒厳令に屈せぬ意志を共に育むべし。仏門の教えを通じて、内なる力を民衆に伝えることが我ら僧侶の使命なれば。」
井上昇平(学生代表)
「我ら学生も、同じく此の革命の礎となるべく、京の学問の場にて意志を貫き、未来のため立ち上がる所存に御座いまする。若き力をもって、民衆に啓蒙を施し、京の地にて蜂起の旗を掲げんと致します。」
尾崎光子(文化人代表)
「芸術の力もまた、この時においては重要な役割を担うと存じます。詩、歌、劇をもって民衆の意志を鼓舞し、時代の声を表現し続けること、これが文化人としての責務で御座います。」
ボリス・カラーニン少佐(ロシアより派遣されし軍事顧問)
「皆の覚悟を頼もしく思います。然れど、戒厳下の軍は統制が強固に整い、機密保持もまた強化されること必至。最も効果的なる戦略は、少数精鋭の者にて要所を制圧し、民衆の蜂起の流れを確固たるものとすること。潜伏して作戦を練りつつ、要所に於ける連携をより密にせねばなりません。」
幸徳秋水
「皆の意志が一つに集まること、実に心強き限りなり。此の戒厳令も恐るるに足らず。我らはより密なる連携を以て、帝国の力に屈することなき精神を築かん。此れよりは地下にて指令を発し、各々の地に於いて蜂起の火を絶やさぬよう、今一度、役割と行動を確認し合わんと致しましょうぞ。」
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こうして、戒厳令の重圧を受けつつも、彼ら革命の指導者たちは一歩も退くことなく、各々の決意を新たにし、連帯の絆を更に強固なものとした。彼らは地下活動を通じて帝国の権力に抗い、民衆の中に革命の意志を根付かせ、戦いを続ける覚悟であった。
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