第11話 二月二十二日 京畿進軍後の総括討議会

京畿への進軍を決行せし革命勢力は、既に帝都の周縁にていくつかの戦果を挙げたり。然れども帝国軍の反撃も激しさを増し、また統制の乱れし地方の勢力も割拠せる状況にあり、容易には大局を掴むこと能わず。此の大局を如何にせんと、幸徳秋水、片山潜、山川均、ロシアより派遣せられしアレクセイ・イヴァノフ、農民代表・田中庄吉、労働者代表・大村清太郎、軍の内通者・中村中尉、さらに新たに参画せし僧侶代表・釈円信らが一堂に会し、京畿制圧後の方策を議することとなりぬ。



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幸徳秋水、状況の整理を示し次の一手を議論す


幸徳秋水

「諸君、我らの進軍によりて京の周縁は既に民衆の手に渡り、帝国の支配は次第に動揺せり。されど未だ帝都を完全に掌握せしとは言ひ難く、帝国軍は残存せる力を結集し、各地に反撃を試みて候。我らの目的たる帝国の完全なる打倒には、一層の結束と組織力を要すること明白に候。各位、現下の情勢を踏まへ、如何にせばよろしきか、意見を賜りたし。」



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片山潜、民衆の統制と教育の必要性を述ぶ


片山潜

「秋水先生の仰せの如く、京畿における支配を確固たるものとせんためには、民衆の意志を統制し、同志としての意識を更に高めねばならぬ。民衆は長きに亙り帝国に搾取され続けたが、未だにその苦痛を打破するための組織力に欠けたり。農村や下層民に対し、我らの思想を解き、彼らに新たな秩序の理念を示さば、より強き支持を得るべし。」


田中庄吉

「片山先生のお考へ、誠に賛同仕り候。村々の民も、新しき世の到来を喜ぶものの、何を以て其の世を築くべきか未だに不安を抱き候ふ。我ら農民側の代表として、更に農村に足を運び、共有の理念を教育し、彼らが革命の担ひ手として立ち上がる手助けをする所存なり。」



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山川均、労働者層の意識向上の必要を説く


山川均

「農民同様、都市労働者も帝都内にて我らの思想を受容しつつあるものの、未だ彼らの中には帝国支配下に染まれる者も多し。此の機を逃さず、京の工場や町々に更なる教育と啓蒙を施し、彼らが自己の権利を守る術を自覚するやう、組織立てることが急務に候ふ。清太郎殿、労働者の組織化に関する報告を賜りたく。」



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労働者代表・大村清太郎、工場と町内に於ける状況を報告す


大村清太郎

「山川先生、労働者の結束は日を追ふごとに強まりを見せ候ふ。工場の幾つかは帝国の管理下より脱し、我らが組織の運営するところとなり候ふ。然れども、未だ一部の職工らは帝国の脅威に萎縮し、自らを革命に捧ぐることを躊躇するあり。引続き彼らの心に自覚と勇気を促すことが、我らの義務なるべし。」


幸徳秋水

「清太郎殿、御苦労に候ふ。労働者の手に工場を委ね、彼らが主導権を持つことで、真の労働者階級の力を帝国に示し得るやう引続き努力致されよ。」



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軍の内通者・中村中尉、軍内部の状況を報告す


中村中尉

「各位、軍内の同志もまた、京畿にて着実に増加致し居り。帝国側も亦、内なる不安に動揺し、一部にては我らと内通を図らんとする将校も増えつつ候ふ。然れども、尚多くの者は帝国の支配に忠誠を誓ひ、反乱鎮圧に精力を注いで候ふ。更なる浸透と内通を強化し、帝国軍を内部より崩すことを図るべしと存ずる。」


アレクセイ・イヴァノフ

「流石に中村殿、帝国軍内の同調者が増せば、帝国側は我らの行動を制する力を失ひ、士気の低下を免れぬ。軍内部の協力者を以て、京畿内の戦況を我らの有利に導くこと肝要なり。」



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僧侶代表・釈円信、革命の精神的基盤と民衆の信仰心について意見を述ぶ


釈円信

「諸君、我が仏道の僧侶として、此度の革命に際し、一つ提言致したく存ずる。帝国の圧政に苦しむ民衆は、精神的にも追ひ詰められ、心の拠り所を失ひて居り。彼らに、真の自由を得るための信念を抱かしめ、我らの思想が単なる破壊ではなく、再生と救済の道であることを説かねばなりませぬ。仏道の教えと革命の理念を重ね、民衆の信仰心を新しき体制の下に導くことが肝要かと存じ候ふ。」


幸徳秋水

「円信殿のお言葉、誠に然り。民衆の心に根ざす宗教的信念を我らの運動に統合することで、革命に対する共鳴を一層深め、精神的な柱として立てるべし。京の民もまた、帝国の搾取に疲弊し、新たなる信仰を求めて居り候ふ。」



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アレクセイ・イヴァノフ、国際連携と革命の正当性を示す


アレクセイ・イヴァノフ

「同志諸君、我らの此度の革命は、単に国内の変革に止まらず、世界革命の一環としての意義を有するものと心得よ。帝国を打倒せば、他の被支配国にも影響を与へ、民衆の覚醒を促す契機ともなり得る。此の戦ひが正義であることを国内外に知らしめるため、我がロシアの革命政府とも連携を深め、支援を仰ぐ準備を整へたし。」


幸徳秋水

「イヴァノフ殿の御提案、まことに意義深し。我らが革命が世界の民衆にとりて希望の光とならんため、他国の支援を得ること肝要なり。我らが此の地に於いて勝利を収めることにより、同時に新しき世の中を示すべし。」



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結びの決意


幸徳秋水

「諸君、此の革命の歩みを止めること無かれ。帝都は目前にあり、我らの理念は確実に民衆の心に根付きつつあり。京畿の完全なる掌握を以て、全国の覚醒を促し、帝国の時代を終焉せしむる大義を貫徹すべし。片山殿、山川殿、そして諸君、今こそ力を結集し、我らが目指す新たなる未来を民衆の手に成し遂げんことを!」


一同

「承知仕り候!」



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かくして、革命勢力は京畿にて更なる一歩を踏み出すべく、心を一つにし、その志を共に固めた。




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