第9話 二月十五日夜 宮城内会議室にて

名古屋の陥落を受け、帝国の中枢は大いなる衝撃に見舞われた。全国各地に燎原の火の如く広がる革命の波は、ついに一大都市をも掌握せしめ、軍の権威を揺るがせた。帝国の威信を取り戻さんと、緊急に招集された会議には、天皇を中心に首相寺内正毅、内務大臣後藤新平、陸軍大臣田中義一、警視庁長官川村竹治、参謀本部次長東條英教、そして特務機関を統括する高島易中将ら国家重鎮が勢揃いせり。



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【首相・寺内正毅、会議を開く】

寺内正毅

「陛下、本日ここに参集したるは、名古屋における蜂起勢力の支配確立に関して対策を講じるためにございます。名古屋の陥落は国家にとり一大事にて、各地の民心に動揺を与える恐れが大なり。我らが直ちに対応策を決し、挽回せねばなりませぬ。」



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【陸軍大臣・田中義一、軍事的対応の要請】

田中義一

「陛下、名古屋陥落は軍の威信を揺るがすものにて、迅速なる鎮圧が急務と存じます。帝国陸軍としては、名古屋奪還のため直ちに主力部隊を派遣し、徹底的に蜂起勢力を排除する所存にございます。しかし、兵力の動員には全国の安寧を保つため、政府の決断と全面的なる支援が不可欠にございます。」


後藤新平

「田中大臣のおっしゃる通り、陸軍の迅速な対応が必要でござろう。しかし、ただ力に訴ふるのみならず、蜂起の原因を根本より断つことも肝要かと存じまする。名古屋を拠点に彼らの勢力が一層拡大せば、我国の安寧は危機に瀕するに相違ございませぬ。」



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【警視庁長官・川村竹治、治安維持策を提案】

川村竹治

「名古屋陥落により、民衆の間には蜂起勢力への共感が生じつつあります。首都圏全土において蜂起の模倣を図る者が広がるやもしれませぬ。斯様な動きを未然に防ぐため、官憲による徹底した取締りを強化し、各地の秩序を維持するための治安維持策を講じることが急務と存じます。」


高島易中将

「我が特務機関におきましても、名古屋奪還に向けた情報収集を進める所存にございます。先の戦闘にて、革命勢力には諜報技術に精通する者が潜伏しておることが判明致しました。殊にロシアの影響が疑われ、彼らと接触し蜂起を煽る外国勢力の存在も無視できませぬ。斯くなる上は、帝国の安寧を脅かす外敵を断固として排除する所存にございます。」



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【参謀本部次長・東條英教、総力を挙げた反攻策を提案】

東條英教

「陛下、名古屋にて労働者と農民が共に蜂起せしは、革命思想が根強く浸透せる証左にございます。此の革命の火種を断たざる限り、全国に波及するは必至と存じまする。陸軍の出動に加え、戦闘の速やかなる終結を目指し、情報戦と政治的工作も並行して行ふべきと考えまする。」


寺内正毅

「然り、総力を挙げて革命勢力の根絶を図らねばなりませぬ。軍事力、情報戦、政治的宣伝を駆使し、徹底して蜂起を鎮圧せねば、国民の不安は拡大し、国体に揺らぎを生ずる恐れがございます。」



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【内務大臣・後藤新平、情報操作と国民へのメッセージを提案】

後藤新平

「官民一体となり、帝国の安寧を維持せんがためには、情報操作も必要と存じます。全国に向け、革命勢力の行為を「無秩序の徒」として描写し、民衆が彼らに同調せぬよう手を打つべきかと。新聞や通信網を利用し、蜂起の惨状や反乱の危険性を広く知らせることで、名古屋以外の民衆の心を政府側に取り戻すことが肝要かと考える次第にございます。」


田中義一

「後藤殿の意見、全く同感なり。軍事的対応と同時に、民衆の心を政府へと引き戻し、革命思想を鎮めるための心理戦も重要にござる。農村部や労働者層への啓発も怠らず行ふべし。」



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【高島易中将、革命指導者の捕縛策について発言】

高島易

「斯くなる上は、幸徳秋水、片山潜、山川均といった革命の主導者を拘束することが最重要にて候。名古屋奪還後、直ちに彼らを拘束し、迅速なる裁きを以て民衆の反乱心を鎮める所存にございます。」



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【天皇、最終決定を下す】

天皇は一同の議論を静かに聞き入れ、ゆっくりと重々しい口調で告げらる。


天皇

「諸卿の献策、誠に頼もしき次第なり。名古屋の地にて生じたる混乱は、帝国の威信にかかわる事態なり。陸軍の力を以て直ちに名古屋を奪還し、革命の火を鎮めんこと、政府の総力を挙げ遂行することを命ずる。」


「また、民衆の動揺を防ぎ、国体の安寧を保つため、速やかに情報を制し、秩序を乱す者どもに厳格なる措置を講ずるべし。諸卿、今こそ我が帝国の安寧を守るべく尽力せよ。」



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斯くして会議は閉じ、帝国の重鎮たちは各々の任務を果たさんと席を立つ。名古屋奪還と革命勢力の徹底的なる鎮圧へ向け、国家中枢はその全力を傾注し、危機の芽を断とうとする覚悟を固めたり。


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