第7話 二月八日夜 大日本帝国政府 緊急会議室

帝都各所にて発生した労働者と農民の蜂起は、政府にとって未曾有の脅威なり。急遽召集されし大日本帝国政府の重鎮たちは、威厳を保ちつつも、内心には危機感を募らせ会議室へ集まれる。


出席せる者、首相寺内正毅、内務大臣後藤新平、陸軍大臣田中義一、警視庁長官川村竹治、参謀本部次長東條英教、さらに特務機関を統括する高島易中将といった、国家中枢を担う重鎮たちである。



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【寺内正毅、会議を開き状況報告を促す】


寺内正毅

「皆の者、此度の蜂起はかつてなき規模にて、労働者、農民ともに共鳴し蜂起せり。まずは各地の状況を確認し、迅速なる対策を決せねばならぬ。川村長官、現状の報告を願いたし。」



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【川村竹治、首都における蜂起の状況を報告す】


川村竹治

「閣下、現在、東京および大阪の工場地区にて労働者が数千人規模にて決起し、赤旗を掲げ工場を占拠し、官憲と衝突を繰り返しておる次第にございます。特に浅草、品川、そして大阪北部にて警官隊との衝突が激化せり。逮捕者は百名以上に上れりも、蜂起の勢い衰えぬ様子にて、現時点では鎮圧に困難を要し候。」


後藤新平

「労働者の士気が高きことは、これまでの我が国の政策に反発するものであろう。賃金および生活環境の悪化に加え、昨今の物価高騰が原因に違いあるまい。」


田中義一

「労働者と農民が一致団結し蜂起することは、社会主義思想の浸透が根底にあるものと見られる。何らかの策を以て早急に対処せねば、さらなる拡大を招く恐れがござる。」



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【後藤新平、対策を協議せんと提案】


後藤新平

「今こそ強権を以て鎮圧に挑むべきと考える。だが、過剰なる力の行使は民衆の反感を増し、逆に勢いを増す恐れあり。私見を申し上げるならば、まずは指導者層の拘束を進め、扇動を抑えんとするべきかと存ずる。」


寺内正毅

「それも一つの策であろう。然れど、指導者層は民衆の中に紛れ、姿を隠しておるやもしれぬ。ならば、これをあぶり出し、諜報機関を以て所在を突き止めねばなるまい。高島中将、貴官の特務機関に如何なる対策が取れるや。」



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【高島易中将、特務機関の計画を述ぶ】


高島易

「閣下、我らが特務機関にては既に民衆の動向を監視し、主要なる組織の情報は把握しており候。然れども、指導者たちは慎重に動きており、即時の拘束は容易ならず。更に、ロシアからの扇動者が潜伏しているとの報もあり、彼らの動向を追跡するべく諜報員を増員せんと考える次第にございます。」


東條英教

「ロシアの扇動者の影響は甚大なり。彼の地にては帝政を覆し、社会主義が力を持ちたり。此の思想が我国に及ぶことは断固防止せねばならぬ。特務機関の増員に賛成いたす。」



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【田中義一、軍事的対応の必要性を主張】


田中義一

「民衆の鎮圧には、早急なる軍の派遣が不可欠に存じます。然れども、出動の正当性を確立するため、蜂起勢力を「暴徒」として断じ、民衆への説得を進めることも重要かと考える。現時点では大規模な出動は避け、小規模な部隊を用いて各地の拠点を封鎖し、流通を制圧すれば鎮圧は更に容易となるべし。」


寺内正毅

「正しき意見なり。田中大臣の案を基に、必要とあらば陸軍を派遣し、各地の物流を抑制せん。物流が止まれば民衆も自ずと疲弊し、戦意を削がれよう。」



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【後藤新平、民衆への情報操作を提案す】


後藤新平

「また、我らの手にて「秩序」や「安寧」を望む民衆の心を掴むべきかと。新聞を通じ、蜂起の者たちを「無秩序の徒」「危険思想の輩」として描写し、民衆の共感を削がんとする策を講じるべし。此れにより、民衆は政府の味方となり、蜂起勢力は孤立せん。」


川村竹治

「官憲を以て情報を制御し、新聞各紙に指示を下せば、民心の統制は可能にござる。すぐさま対応いたしまする。」



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【寺内正毅、決定事項をまとめ、会議を締める】


寺内正毅

「よろしい。然れば、今夜の決定は以下の通りとす。

一、指導者層の摘発を早急に進めるべし。

二、特務機関により扇動者および外国勢力の動向を監視、追跡せん。

三、物流拠点を封鎖し、蜂起勢力の補給を遮断するべし。

四、新聞を通じ蜂起の勢力を危険視せしめ、民衆を説得すること。


皆の者、我国の秩序と安寧を保つため、必ずや蜂起を鎮圧し、社会主義思想を排除せねばならぬ。各自、与えられし任務を遂行するよう願う。」


一同

「御意!」



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斯くして政府は、武力と情報戦を駆使し、蜂起の鎮圧に全力を挙げるべく動き出せり。この夜の会議は後に「八日会議」として記録され、帝国が如何にして反乱の芽を摘まんとしたかを物語る象徴となりき。


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