第6話 二月八日夜 幸徳秋水宅密会所
夜の帳が下りた頃、一同は緊迫感に包まれしまま、再び集結せり。蜂起の渦中、幾多の戦況が彼らの元へ伝わり、その報告を基に次の方針を討議せんとせり。此処に集うは幸徳秋水、片山潜、山川均に加え、ロシアより派遣されしアレクセイ・イヴァノフ、農民代表の田中庄吉、労働者代表の大村清太郎、そして軍の内通者・中村中尉なり。
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【幸徳秋水、会合を開き、現状の報告を促す】
幸徳秋水
「諸君、今宵我らがここに集いしは、蜂起の進展を確かめ、次なる行動を決するためなり。報告の段、まずは農村の状況を伺いたし。田中殿、如何に。」
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【農民代表・田中庄吉、蜂起の状況を述ぶ】
田中庄吉
「秋水先生、皆様方、吾ら農民の蜂起は計画通り進展せり。信濃および越後の村々にては村長の指導の下、自衛組織を結成し、村の守りを固めたり。また、各地の役所や地主の屋敷を占拠し、土地の分配を開始せり。米蔵も解放し、民衆へ配給を行ふ。」
山川均
「よろしき哉、田中殿。然れども、役所の占拠に対し官憲の動きはいかなるか。」
田中庄吉
「東北にては官憲の来襲を撃退したるも、兵の数が増えつつあり。各村は一致団結して防衛に努むるも、支援なければ長期の持久は困難にて、何卒援護を仰ぎたし。」
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【労働者代表・大村清太郎、都市部の状況を報告す】
大村清太郎
「帝都及び大阪の工場にて、労働者は一斉に赤旗を掲げ、工場を封鎖したり。賃金引き上げを求む声が広がり、各工場にて同志が団結し、官憲と小競り合いを演じたり。だが、都心において警官隊が鎮圧を試み、数名が拘束されし次第にて、戦況は予断を許さず。」
片山潜
「帝都における我らの活動は、労働者の士気を鼓舞せり。然れど、警官隊の圧力は侮れず、我らも一部の工場に援護を差し向けねばならぬ。」
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【軍の内通者・中村中尉、兵の動向を述べる】
中村中尉
「諸君、拙者が報告せんは、軍内部の現状なり。昨今の蜂起に驚愕せし上層部は、警戒を強化せり。今般、東京と大阪に兵を派遣する命令が下され、装甲車も動員せる様子。しかし、下士官の一部は我らに同調の意志を示せり。隙をついて弾薬を流し、密かに援助する手配は整えたり。」
幸徳秋水
「よろしき報告なり、中村殿。然らば、我らも其の弾薬をもって各地の自衛に備えるべし。然れども、軍の動向は早急にして、その支援が延びれば我らの士気を削ぐやもしれぬ。」
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【アレクセイ・イヴァノフ、さらなる軍事支援の必要性を説く】
アレクセイ・イヴァノフ
「同志諸君、革命の成否は此の一戦にあり。貴国の民衆の勇気は称賛に値すれども、長き戦闘を耐え得る体制を整えねばならぬ。然れば、拙者の提案とし、帝国の中心たる交通網を断ち切り、物流の流れを遮断せしむる策を講ずべし。」
片山潜
「さすれば、官憲の補給も減じ、民衆の士気を削がぬ手立てとならん。早急に同志を各地の交通要所に派遣し、封鎖を試みる所存なり。」
山川均
「農村にても交通網の断絶を図り、都市との連携を図らば、官憲の干渉を遅らせることが叶わん。」
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【討議の結論】
幸徳秋水
「諸君、我らの戦局を盤石とするべく、各地の役割を再確認せねばならぬ。田中殿は農村の防衛を続け、労働者の支援を乞うべし。大村殿は帝都の労働者の結束をさらに固め、民衆の士気を鼓舞する役割を担いたし。そして、中村中尉とイヴァノフ殿により、兵の援助を受けつつ物流の遮断を実行せん。かくして我らは、官憲に戦力を集中させる隙を与えぬよう連携を強化し、必ずや勝利を手中に収めるべし!」
一同
「承知仕りたり!」
斯くして、彼らは新たなる決意を胸に、革命の行方を左右する次の一手を打つべく行動を開始せり。此の夜の会合は後に「二月の決起会」と呼ばれ、日本における民衆革命の分水嶺として語り継がれることと相成りき。
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