第36話 奴隷傭兵、強化された風魔法を体感する
「あの、これからもこちらで魔術書を購入させて頂きますので、もう少し安くなりませんか?」
「ほぅ、常連になってくれるってことかい。なるほど・・・・・・」
エルは笑顔で二百万ディナーリを提示する。
「バカ言うな、首くくれってのかい。四百万だ」
「それでしたら、二百五十万では?」
エルは笑顔を全く崩さず引き下がらない。押し問答は延々と続き、三百二十万ディナーリでようやく決着がついた。エルの奴よくあんな張り付いた笑顔で対応できるな、俺なら絶対にキレる自信がある。
書店の婆さんから本のカギを受け取った俺たちは、かつて俺が狂戦士の適正を試した広場にやって来た。広場といっても、俺が縛り付けられたような木がたくさん生い茂っている。
どっかの貴族の屋敷みたいに芝生があって綺麗に手入れなんてされてるわけではない。いよいよアニーの魔法の成果を見れるのかと思うと、少しワクワクする。エルの治癒術も魔法といえば魔法だが、地味すぎてあまりパッとしない。どうせならやはり攻撃魔法を見たいってもんだ。
「バーン、それじゃあそこに立って。今見せるよ」
「いや、なんで俺が攻撃対象みたいな扱いなんだよ?」
「冗談だよっ」
アニーは笑って詠唱を唱え始める。相変わらず何言ってるかわからんが、アニーが杖を振る瞬間の最後の言葉だけは聞こえた。
「ワールウインド!」
杖の先からつむじ風が発生し、落ち葉を撒き散らしながら地表を抉っていく様子は感動ものだった。だが、攻撃力の面で考えると実用性は全く無さそうだ。
「アニー、この広場全体に強風を吹かせることは出来ますか?」
腕組みしながら見ていたエルはアニーにそう尋ねると、すぐに詠唱を唱えて杖を振るう。
「ワイドレンジウインド!」
今度はフィールド全体に強い風が吹き始める。エルはそれを見て喜んでいたが、俺としてはなんか釈然としない。
「もっとこう、なんかあるだろ?なんかそれっぽい魔法とかないのか?」
「それっぽいってのがわかんないけど、バーンが受けてくれるならやってみる?」
「おおっ、あんのか。よし来いっ!」
アニーはニヤッと笑っている。結局俺に向けて撃ちたいってのは冗談てわけじゃないらしいな。アニーが詠唱を始めると杖の先が光り始めた。何かよくわからんが、風が集まってる。
「ガスト!」
杖の先から集まった風が周囲の枝をへし折りながら、一気に俺の方に向かって来る。風の塊、風圧ってやつか。俺は腕をクロスにして姿勢を低くして受ける。ドンッっという風圧が俺の身体を後ろへ押し戻した。少し後ろへ押されたか。殺傷能力は皆無だが、使いどころによっては厄介だろうな。
【後書き】
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