第35話 奴隷傭兵、本屋へ再び

 これを数日も続けると五十では物足りなくなってきたので、百に増やして同じことを繰り返した。こうして一か月も籠った結果、リアの能力は格段に上がり妖魔兵の数も五百を超えた。


 ここまでくると完全に軍隊だな。このまま州都まで連れていくと色々悪目立ちするとのことで、妖魔兵たちは荷物持ちのための三匹を除いて森のなかに戻すことになった。リアが近くに来れば自然とまた制御下に入ることになるらしい。


 州都の近くまで来ると荷物持ちの妖魔兵は森に帰ってもらい、俺が代わりに荷物を持つ。一か月ぶりに州都の宿に戻って来るとアニーと感動の再会が待ってるかと思いきや、彼女の最初の一言は「くさっ!」だった。


 そういや一回も身体洗ってなかったわ。取り急ぎ、宿の一階に備え付けの浴室で身体を洗って服を着替えることに。ようやくその作業が終わって全員が部屋に集まると、話題は生活魔法の話になった。


「バーン、僕はアニーに生活魔法を習得してもらったほうがいいと思います」


「そりゃいいが、アニー。おまえ、魔法の練習はどうだったんだ?」


 俺の質問にアニーはふふんと得意げに答える。


「バッチリだよ!あとで見せるから」


 宿のなかでやらないことを考えると、どうやら少しは期待出来るのかもしれない。話は生活魔法に戻り、クリーンという魔術書を例の書店に買いに行くことになった。その途中で傭兵ギルドに立ち寄り、ゴブリンの右人差し指を証拠に討伐報告をする。

 

 とんでもない悪臭だったので、数えたやつからすぐに燃やされた。結果から言えばリアの討伐数は俺とエルがふたりで狩っていた記録を大きく超え、報酬は五百万ディナーリ近く。数の力はすげぇってことだな。その足で例の強欲婆さんがやってる書店に行く。


「よう婆さん、生きてるか?」


「あんたかい、失礼な男だね!死んでたらここにおらんわ。今日は何の用だい?」


 俺だと口が悪いと判断されたせいか、エルがその後は引き継いで話す。


「実は生活魔法の魔術書を探してるんです」


「ほう?生活魔法・・・・・・どの生活魔法かね?」


 後ろで見ていたアニーがたまらず口を挟む。


「あのっ、クリーンって魔法を探してるんですけどっ」


「それならあるよ」


 婆さんはアニーに対しては優しい笑みでニコっと笑って頷いた。なんだこの対応の違いは・・・・・・。前回と同じように店の奥の棚に移動して、魔術書を指差す。


「ほれ、それがクリーンさね」


「あの、おいくらでしょうか?」


 アニーの質問にニコっと笑って答えた婆さん。


「ああ、五百万ディナーリさ」


 んのヤロウっ!表情と額が合ってねぇんだよババア!!俺が思わず口を挟みそうになると、エルが俺を抑えて話し出す。



【後書き】


 お読み頂き、ありがとうございます。


 この作品はカクヨムコン参加作品です。


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