第30話 奴隷傭兵、魔術書を探す
エルの案内で本屋についてみると今にも潰れそうな本屋が一軒寂れた通りにあった。店のなかに入って、ふと目線を落としてみるとほとんどの本に埃が被っている。
「おい、この店客が来てんのか?」
「お姉ちゃん、こっちっち!ここにお花の図鑑があるの」
アニーとリアは本屋に入ってはしゃいでいるが、肝心の魔術書らしき本は見当たらない。といっても、俺は字が読めねぇからここに俺がいても無意味なんだが。ふとエルを見るといつの間にか店主の婆さんと話し込んでいた。俺がそっちのほうを見てるとエルは俺たちを手招きしながら呼ぶ。
「こっちです、みなさん」
婆さんの周りに集まると婆さんは怪訝な顔をして俺たちに尋ねた。
「魔術書なんて、いったい誰が読むってんだい?」
「この子が読みます」
エルが紹介すると、婆さんは目を丸くして驚いた。
「驚いたね、こんな子供が読むとは。長生きはするもんだね。こっちだ」
婆さんは店の奥の扉を開けてなかへと進む。ランタンに火を灯すとその部屋の棚にはびっしりと本が並べられていた。その奥へとさらに進むと奥の棚に並べられた本を指差す。
「そこのがそうだ。一応聞いておくけど、魔法は何に使うんだい?」
「彼女は僕たち傭兵団の一員です」
婆さんは軽く溜め息をついた。
「そんなこんだろうと思ったさ。戦争に使える魔法は少ないよ、ほれそこにある二冊ぐらいだ」
「火、それに風だ!」
アニーが反応してる。となると、字が読めないのは俺だけか・・・・・・。
「そうだが、火はやめときな。こっちの風がいい」
「なんでだ?火のほうが威力があるんじゃないのか?」
火だったら火球をドカーンと敵のど真んなかにやってくれりゃかなり楽が出来そうなもんだ。
「何を勘違いしてんだか知らんがね、そんな使い勝手のいいものじゃないよ。火を使うなら水もセットっていうのが相場さ」
その婆さんの話を聞いてエルが付け加える。
「昔、火の魔法を使った魔術師が燃え広がる火を制御出来ずに焼死したなんて事例はたくさんあるんです」
「そんなマヌケなもんなのか?なんか、俺のイメージしてるのとだいぶ違うな」
それを聞いてエルと婆さんが同時に笑った。なぜかアニーとリアも一緒になって笑ってる。リアはともかくアニー、おまえはその魔術師の適正がSSSなんだがな。
「たぶん、バーンが想像してる魔術師は魔法ひとつで戦況を変えちゃうようなものを想像してるのでは?」
俺は頷いた。その通りだったからだ。
「そんなに強かったら今頃この大陸は魔術師が支配してただろうよ。世の中そんなうまく出来ちゃいないよ」
婆さんにまで笑われながら言われて俺としては気分の良いもんじゃなかったが、知らなかった世界を知るというのは面白かった。
【後書き】
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