第20話 奴隷傭兵、瞑想する
「なるほど、それならちょうど良い練習相手になるってわけか」
「練習相手にされる妖魔のほうに同情しますけどね」
エルは茶化して苦笑いしてたが、俺としては一刻も早くコイツの補助無しで戦えるようにならないといけない想いで一杯だった。
「バーン、こっちの依頼は僕が受けておくので時間がある限り瞑想をしてくれませんか?」
エルの唐突の提案に俺は面食らった。瞑想なんかしたこともないし、やり方もわからない。
「なんのために瞑想なんかするんだ?」
「出来るだけ戦ってる自分をイメージして、その時に『引』のスキルを使って自分の『自我』を引き寄せる練習をしてください」
なるほど、それならいちいち戦わなくても『引』のスキルの練習が出来るかもしれない。次の日の朝からエルがギルドに行ってる間に、俺はさっそく瞑想に取り組んだ。目を瞑ると『自我』をイメージするために頭から指先、そしてつま先に至るまで神経を集中する。
それが出来たら自分自身の輪郭に意識を集中していった。そして、その輪郭の収まっている『自我』をがっちりと掴む。そうしながら野盗たちとの戦いを思い出しながらイメージした。
瞑想をしてなんとなく掴めたのは、俺が狂戦士化してしまうと『自我』がはじき出されてしまう。そのたびにガッチリと引き寄せるイメージでいたが、それだとダメだった。
「最初からガッチリ掴んでないとダメだな」
俺はそう独り言ちると、再び瞑想に入る。何度か瞑想を繰り返している部屋のドアが開きエルが帰って来た。
「依頼は受けてきましたよ。瞑想のほうはどうですか?」
「ああ、驚いたぜ。おまえの言う通りやってみると案外練習になるな」
その俺の言葉を聞いてエルはニコっと笑った。
「討伐のほうはいつからやるんだ?」
「今からでも出来ますが準備もあります。それに、どうせなら野盗の報奨金をもらってから行きましょう」
俺はエルの言葉に頷く。戦って実戦のなかで身に付けることも大事だが、瞑想でも良い練習になると分かった。今はそう焦ってもいない、自分にやれることをやるだけだ。こうして瞑想を続けながら三日ほど経った。
傭兵ギルドから連絡があり、無事に野盗討伐の確認が出来たとのことで報奨金を得る。それを機に俺たちは街を出た。目的地はシャティヨンの東にある森林地帯だ。もっと奥に行けば山が深いところに通じるが、深く潜れば潜るほど数も増えるし危険度も増す。
当面は森の浅い所でスキルを鍛える。街を出てから二日ほどもすると鬱蒼とした森が見えてきた。
【後書き】
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