第13話 奴隷傭兵、夢を見る

 この六日間で変化があったことがある。宿屋の女将がテーブルをアルコール消毒するようになったことだ。まさかと思うが、エルが薬剤ギルドにアドバイスしたことが広まっているんだろうか。


 そんなことを考えているうちに神殿に到着した。実際、宿屋から神殿までそんなに遠くは無い。相変わらずの壮麗な建物だ。建築美ってやつだろうか。なかに入ると、先日俺たちと話をした神官が待っていた。


 彼の案内で神殿の奥の間へと通される。その部屋の奥は暗がりでよく見えなかったが、ひと際壮麗な衣服を纏った老人がいた。恐らくその爺さんが神殿長なのだろう。神殿長と目が合うと、エルから挨拶をした。


「あなたがたが適正の鑑定をする方たちですね」


「はい、ぼくたちです。よろしくお願いします」


 老人は微笑みながら頷いた。そこで傍にあった壺から杯に何かの液体を注いでいく。


「早速やっていきましょう。まずは、これを飲んでください。飲んだらそれぞれ右と左のある部屋に別々に入ってください。なかに入るとテーブルの上に赤い実が置いてあります。それを召し上がってください」


「にがっ!」


 エルが杯の液体を飲んでマズそうな顔をする。それを見て俺も飲む。液体が喉を通ると、ぐわぐわと熱いものがこみあげて来る。なんだこれ?酒か?そして、そのまま一気に飲み干すと、それぞれ左右の部屋に分かれて入って行った。


 部屋のなかは外からの光が一切入らないようになっている。入り口からの光を頼りに見てみると、テーブルの上の皿に赤い実が乗っている。それをひとつ摘まんで食べると、たちまち意識が飛んでぶっ倒れた。



 夢を見た。大海原を超えていくと向こうに大陸が見える。大陸の上では大きな戦争が起こっていた。人間と魔族の戦争・・・・・・。よく見ると魔族にはさまざまな種類がいる。人の側も人間だけじゃなかった。


 違う種族も混じってる混成部隊になっている。過去なのか未来なのか、それともただの夢なのか・・・・・・。俺には区別がつかなかった。やがて、景色は変わる。光の渦のなかに入ると、暖かな穏やかな気持ちになった。父親と母親がいる傍で遊んでいる幼い子供がいる・・・・・・俺か。昔の記憶・・・・・・。


 急に場面が夜に変わる。戦火に逃げ惑う人々の群れのなかで、両親は俺を連れて逃げて橋まで来た。橋は誰かが火を放ったらしく燃えている。そこで敵に追いつかれ、俺の両親は殺された。


 その後は真っ暗な闇が広がっていく、その闇の中心に炎が灯る。小さい炎の下から灼熱のマグマが噴き出し・・・・・・そこで俺の夢は終わり、目が覚めて起きたら俺は泣いていた。


【後書き】


 お読み頂き、ありがとうございます。


 この作品はカクヨムコン参加作品です。


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