第6話 奴隷傭兵、未来から転生した少年と出会う
「わかりません、たった今思い出したんです。でも、これだけははっきり言えます。この世界は十年後に滅びます」
「十年後に滅びる?何を根拠にそんなこと言えるんだ?」
俺の疑問はもっともだ。誰が聞いたってそんな話信じるわけがない。
「今現在、デュラフォート州とラ・エスカローナ州が戦争中ですよね?たぶん、デュラフォート州は今から三日後にマリー・ジョルジュという城塞都市を失います」
「そんなことあり得ねぇだろ。あそこは、鉄壁の城塞だって有名だぞ」
デュラフォートとラ・エスカローナが戦争中なのは、誰でも知ってる。同時に、デュラフォートが優勢に戦を進めていることも誰もが知る事実だった。
「そんなこと信じられねぇが・・・・・・。ガキが話す内容じゃないのも確かだな」
「あの・・・・・・お願いです。僕を連れてってくれませんか?このままここに居たら・・・・・・」
そんな話、命からがら逃げてる身分の俺にされても困る。俺は首を横に振った。
「悪いけど、俺だって自分が生きるので精一杯だ。今日だって俺が所属する傭兵団は敗退して散り散りになってんだ。戻る場所すらあるかわからんのに、おまえの食い扶持まで稼ぐ余裕はない」
「僕、字だって読めるし書けます。色々知識もあります」
ロクな教育を受けなかった俺は字が読めない。だが、字が読めて書けたからどうだってんだ?生きるか死ぬかの世界で何の役に立つんだ。俺は再び首を振った。
「そ、それなら僕があなたを護衛として雇います!」
そう言われて思わず俺は笑った。十歳の子供が護衛を雇うなんて聞いたことがない。
「雇う!?金なんか持ってんのかおまえ?」
俺の質問にその子はニコっと笑って、床下の穴を探る。ガサゴソを手で探っているようだったが、無事見つかったらしく革袋を取り出した。
革袋の中身を月明かりが照らす床に出す。なかに入ってるのは銅貨と賤貨ばかりだったが確かに金だった。
「こいつは驚いたな」
「僕の両親が密かに貯めていたお金です」
子供の護衛なんてやったことがない。正直、足手まといを連れていたら死ぬ確率が上がるだけだ。
だが、ここまでされて断るなんて男が廃れるってもんだ。俺はその子の覚悟を見て承諾した。
「わかった。名前をまだ言ってなかったな、俺の名前はバーンだ」
「バーン・・・・・・。僕はエルです」
俺とエルは今後のことについて簡単に話し合った。とりあえずこの街を出ることが先決だ。エルには両親との別れの時間を作った。
出来れば弔ってやりたいだろうが、そんなことをする余裕はない。倒した兵士たちを家の奥に隠し、念のため他の家へ移動した。
【後書き】
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