好み
「これが、ヒロトの好み?」
「違……わないです、はい」
ここで否定しても更に長引くだけだと思い、俺は諦めたように頷いた。
愛羅の持つ下着は片方が黒色の下着でもう片方が赤色の下着だった。
……はぁ。俺は娘相手に何を言ってるんだか。
まぁ、あの中身が透けそうな下着よりは全然マシだし、諦めるけどさ。
「このブラジャー? っていうのも同じ色が好み?」
「……はい」
正直なことを言うのなら、愛羅にブラジャーが必要なのかは分からなかったけど、俺は何も言わずに頷いた。
……小さいから必要ないんじゃないか? なんて女の子相手に言えるわけないしな。
「……ヒロト」
「な、なんだ?」
「……ヒロトは、どっちが好み?」
どっちが好み……?
下着の話か? 俺、さっき言ったよな? また、言わされるのか?
「……違う。そうじゃなくて、胸の話」
「……」
「……大きいのと、小さいの、どっちが好き?」
俺が胸のことを考えていたから、聞いてきた訳では無いよな?
愛羅に人の心の内を読むようなスキルは無かったはずだもんな?
「どっち」
……愛羅の将来のことを本気で思うのなら、大きい方だって言うべき、だよな。
そう言えば、愛羅が俺を諦めてくれる可能性が高くなるだろうし。
「大き──待て待て待て! な、何をしようとしている?」
そう思い、大きい方だと言おうとしたその次の瞬間、いつの間にか俺の腕は愛羅に掴まれていて、愛羅の胸に向かって押し付けられそうになっていたので、直ぐに愛羅から距離を取った。
「? ヒロトが小さい胸の魅力を知らないみたいだったから、教えてあげようかなって」
当たり前のような顔をして何を言ってきてるんだ。
……え? 俺の娘、こんなに強引なところがあったの? 知らなかったんだけど。
意外な一面を知れたと喜ぶべきか、そうじゃないのか。……間違いなく、今に至っては後者だろうな。
いや、強引な愛羅も俺の娘であることには変わりないし、ちゃんと可愛いとは思うけどさ。
「……いいよ、触って。昔ヒロトに教わって、自分で調べてみた限り、ギリギリBはあるから、揉むこともできる」
俺がそんなことを思っている間に、愛羅は何を勘違いしたのか、少しだけ照れたような顔をしながら、そんなことを言ってきた。
いや、待て待て待て。本当に何を言っている?
つか、Bあるのか? ……いや、娘のカップ事情なんてどうでもいいけど、Aじゃなかったのか。いや、どうでもいいけど。
俺が触ることなんて無いし。
「触るわけない、だろ」
「大丈夫。直ぐに大きいのなんかじゃなく、小さい方が良いって思うようになるから」
「…………分かった。……いや、触るわけじゃないけど、分かった。……あれだ。嘘、ついた。……小さい方が好き、だから、もうほんと勘弁してくれ」
「ほんと?」
「……ほんと、だよ」
「良かった。嬉しい」
「……言っておくが、小さい方が好きだって言っても、別に愛羅のが好きってわけじゃないからな?」
「大丈夫。私、頑張るから」
……さっさと服と下着を買って、夜ご飯でも食べに行こう。もういい時間になったしな。
「ヒロトなら、いつでも触っていい、からね。……ちょっとだけ恥ずかしいけど、それ以上に嬉しい、から」
聞こえていない振りをして、俺はそのまま下着を持っている愛羅と共にレジに向かった。
「ヒロト」
そして、店員さんが一つ一つバーコードリーダーで商品をピッピッとしていっているのを眺めていると、愛羅に呼ばれた。
「どうした?」
愛羅の方に視線を向けつつ、そう聞いた。
……また変なことを言い出すんじゃないだろうな、という不安を胸に抱えながら。
「何でもない」
「? そうか?」
「うん」
何だったんだ? と思っていると、愛羅が横から俺に抱きついてきた。
……まぁ、もうこっちに帰ってきてからも何回か抱きつかれてるし、別にいいか。
慣れることは無……いや、相手は娘なんだから、慣れるもクソも無いんだけど、まぁ、拒絶する理由もないから、俺は愛羅を受け入れるように愛羅の頭を撫でつつ、視線を元に戻した。
すると、店員さんが俺たちを微笑ましいものを見るような目で見てきていることに気がついた。
少しだけ気恥ずかしくなった俺だけど、愛羅と仲がいいのは本当のことだし、特に何も言わずに財布を取り出した。
恋人だと思われている……なんてことは愛羅の見た目的に無いだろうから、兄妹だとでも思われてるんだろうな。
そして、金を払おうとしたところで、俺の視界にはついさっき愛羅には置いていかせたはずの中身が透けそうな下着があることに気がついた。
……ちょっと待て、いつの間に仕込ませた?
後もう一つちょっと待って欲しい。
それがそんなところにあるってことは、さっきの店員さんの視線の意味が変わってこないか?
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