一緒にいられるなら
「……愛羅」
「何?」
「……部屋から出てくれないか?」
制服に着替えるために部屋に戻った。
そこまではいいのだが、何故か愛羅が付いてきていることが問題だった。
「なんで?」
「なんでって──」
そこまで言って、俺は気づいた。
そういえば、あっちの世界では普通に愛羅が気にしてなかったみたいだから、愛羅の前でも服を着替えたりしてたな。
……やっぱり、歳が若くなった影響で俺は愛羅のことを娘ではなく異性として……いや、違う。そんなわけない。愛羅は俺の娘であって、それ以上でも以下でもない。
俺は愛羅を8歳の時から育ててたんだぞ? 異性としてなんて見るはずがない。
「何でもない。好きにしてくれ」
「うん。好きにする」
そして、愛羅のことを意識しないようにして、俺は服を着替えた。
「……もう俺は学校に行くけど、愛羅はどうするんだ?」
何となく、答えは分かってるけど、気恥しさを誤魔化す意味も込めて俺はそう聞いた。
「ヒロトに着いていく」
「……そうか。それ自体はいいんだけど、悪いが見られないようにしてくれよ」
愛羅は別世界の人間だから、当然ながら戸籍なんてものは無い。そして、親戚なんかも誰もいない。……いや、俺は親だけどな? 血は繋がってないし、まだ高校生だから、誰に言っても信じて貰えないだろうけど。
とにかく、戸籍が無く親戚もいない以上、同じ学校に通うことなんて不可能だし、愛羅には悪いが、見られる訳にはいかなかった。
もしも学校内で見られたりなんかしたら、ただの不審者でしかないからな。
……一応、姉さんに事情を話して愛羅も一緒の学校に通えるようにしてもらう、って選択肢が無いわけでは無いかもしれないけど……どうやって説明するんだって話だよな。
異世界云々なんて信じて貰えるとは思えないし、姉さんが愛羅を受け入れてくれる保証もない。
もちろん姉さんは優しい人なんだけど、家族以外にはちゃんと警戒心を持ってるからな。それが例え16歳の少女であっても、だ。
「いつも通りだから、大丈夫」
……まぁ、そうだな。
あっちの世界でも、基本的に二人っきりの時以外は俺からも見えないように姿を消して近くにいたもんな。……いや、見えなかったから、本当にずっと傍にいたのかは分からないけど、多分、いたはずだ。
「そうか。……なら、行くか、学校」
俺からしたら8年ぶりの学校だ。
……正直、勉強には全くついていける気がしない。
そういう不安はあるが、それ以上に友達に会える喜びが俺の中にはあった。
姉さんが作ってくれた弁当を持ち、ちゃんと玄関の鍵を閉めて、俺は家を出た。
もう俺には気配を感知することすら出来ないけど、多分愛羅も一緒にだ。
「愛羅、姿を現さないで答えて欲しいんだが、お前、腹とかは減らないのか?」
俺と同じタイミングでこっちの世界に戻ってきたんだとしたら、そろそろ腹が減ってもいいタイミングだと思い、今更ながらに俺はそう聞いた。
「……空いた」
「……コンビニに寄るか」
昼は……俺の弁当を二人で食べたらいいか。
俺が男子高校生でさえなければ、コンビニで適当に愛羅の分の弁当も買ったんだが、残念なことにこっちではまだバイトもしてない俺にはそんな金は無いからな。
「多分、ありがとう」
コンビニなんて愛羅は知らないからこその言葉だろう。
一応こっちの世界のことも何となく教えたことはあるけど、コンビニの話はしなかったからなぁ。
「気にすんな」
正直、愛羅の朝ごはんを買うだけでも俺の財布は結構痛かったりするけど、まぁ、大丈夫だ。娘の為だからな。
─────────────────────
あとがき。
今日はもう一話投稿します。
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