小説家はレディオを聞きながら

沼津平成

一、

 ——千九百七十八年 静岡——


侑李ゆうり、今日一緒に帰れる?」


 侑李はそっけなく返した。「ごめん、今日無理」


「そっか…………なんで?」

「なんでもいいでしょ」

「そっか、そりゃそうだね」


 侑李との分かれ道に立って、少し悲しくなった。「気が変わるかな?」と少し期待していたから。


「まあでもいいや。私は私なりの夢があるから」


 そう思いながらあやはアパートへ帰宅した。

 彩が姉と二人暮らしを始めたのは2年前だ。

 母親と父親から追い出されたのだ。


「いつか、私たちだけでも生活できるようになって、偉くなってやろうね!」


 と誓い合ったあの日からはや2年になる。まだその気持ちは揺らいでいない。

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小説家はレディオを聞きながら 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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