第10話 再会~そしてエピローグ

 空港からワシントンシティーホテルに向かうマーク。


 試験休みに両親の許可を得てやって来た。


 マークの父親の計らいにより、ワシントンシティーホテルに部屋を取ってもらったマークは、空港から直接タクシーでここまで来たのだった。


 ホテル内、フロントにて。


「お部屋は328号室になります。連泊と伺っておりますが、よろしいですか?」

「はい、3連泊でチェックアウトします」

「かしこまりました。朝食はフロアでバイキング形式となっております。ディナーは19時までにカウンターに来てください。ディナーのキャンセルは16時までにフロントに連絡してください」


「レオは何してるんだろう……外出中?……一先ず僕は部屋に入ってようかな」

カウンターレディの説明はうわの空のマークだった。



※※※


 午前早くから出歩いているレオ。


ホテル周辺の調査(?)はほとんど終了。面白い場所がないか探して歩いているのだった。


「何か面白い場所はないものか……。マークは博物館だかがあると言っていた。博物館が面白い場所かどうか知らんが、興味はある。果たしてそれはどこなのかな」


 キッチンカーのホットドックを頬張りながら、通り沿いを歩くレオ。


 その頃、マークは部屋に荷物を置いて、ホテルを出るところだった。


 昼下がりのメイン通り。

短い影と、時折そよぐ風。とても清々しい日中であった。



※※※


ワシントンシティーホテルでレオの帰りを張っていたマーク。

ようやくレオの帰りに出会えた。


「おーいレオーーー」

「おやマーク。いったいどうしたんだね」

「メールを見たよ。だから来たんだ。スミソニアン博物館に行くって両親にねだってさ」


 2人はエレベーターに乗り、レオの部屋へ向かった。


「たいそうな部屋で過ごしているが、マークに来てもらってよかった」

「やっぱり何か問題有り?」

そうだなぁ、ここへ来て、何も得られていないのだよ。なぁマーク、歴史を感じられる所に連れてって欲しいんだが」

「ちょうど良かったよ。僕もその歴史が観たくてさ。それでスミソニアン博物館に行こうと思ったんだよ」

「スミソニアン?」

「あぁ、博物館だよレオ。明日一緒に行こうよ」

「博物館……そこは歴史を感じる事が出来るのかな」



※※※


 そして翌日……。


「スミソニアンなら、レオだって満足すると思うよ。なんせアメリカで1番の博物館さ」

「アメリカで1番?とすると、スミソニアンとやらは世界一と銘打って問題無いと申すか」

「そうだね。世界一ってのは大袈裟かな。でも歴史は感じられる博物館さ」



※※※


 そして博物館入場……。


レオはスミソニアン博物館の観るもの全てに目を奪われた。

レオが過去にノートに記した物が、現実に継承され、発展し、偉大な物になっていた。


 レオはそれを知る事が出来ただけで満足していた。

まぁ、その為にやってきたのだから……。



※※※


 そして、日暮れ間近……。博物館退場。

2人はワシントンシティーホテルのレオの部屋に戻ってきた。


「どうだったレオ?スミソニアン素晴らしいでしょ?僕も感動したよ。だからヨーロッパにも行かなきゃって感じた」

「私も、もうこのまま帰ってもいいと感じたさ。……果たして、我が身はこの先どうしたものだ?もう何も思い残すことは無いが……」

「思い残すこととかなんとか、一体レオは何者?変なオールディーズのコスプレおじさんだったり?」

「私の素性を知りたいと申すか……」

「待って待って。コスプレおじさんは冗談だよレオ。」

「いやいや。今まで過ごせた事、感謝しているよマーク。しかし私の素性が知れたら……知れてしまったら……私はその場で消える。それでも素性を知りたいかな?」

「何となく分かってきた。色々話を聞けて良かったよ。でも、まさかイタリアから来たとはね。しかも違う時代のフィレンツェから……でしょ?レオナルド」

「なんだ、マークは分かっていたのか。……そうさな、私は君に会えて良かったよ。素晴らしい未来が見えたのだから。もう何も思い残す事はないんだ」


 そのとたん、レオの身体は徐々に薄らぎ、消えつつあり、慌てて言葉を伝えるレオ。


「まずい、もう戻らなければならないようだ。借りた服と金はここに置いていく。……そうだよマーク、如何にも君の思った通り、私はレオナルド。ここへは知識の神が転移してくれた。この時代では色々ありがとうマーク。良い経験ができたよ。さぁこの借りた服は私が消えたらここに戻る。もう君とは二度と会えないが言っておく。旅行をするならフランスかイタリア旅行をお勧めする」

「なんかね、レオの言動は気になってたんだ。君の言葉はこの時代にもしっかり残ってるからね、僕はそれに気が付いた。やっぱり君はレオナルド・ダ・ヴィンチだった。沢山の素敵な言葉をありがとうレオ」


 もうレオの身体は半透明にまで変わっている。時代錯誤な服が床に落ちる。


 床の服を見、レオを見。交互に繰り返すと、レオの姿はやがて消えてしまった。


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