パパ活ギャルVS駄菓子屋ばあちゃん

淀川馬琴

運命の最強スキル

48歳の男はブサイクだった。

しかし身の程をわきまえず、美人にしか興味がない。

当然独身である。


しかし、このブ男には尋常ではない意地があった。


風俗に通いつめ、美人の風俗嬢相手に経験を重ねた。

結果、ブ男は貧乏だった。

ブサイクで貧乏。終わりである。

この物語の結末もブ男にとって悲惨なだけだろう。


しかし、ブ男はただ浪費していたのでは無い。

このブ男は女性用風俗キャスト並のスキルを習得するに至っている。数多の風俗嬢が認めるほどに。


そんなある日、ブ男はマッチングアプリで女を探し、パパ活ギャルと会う約束をした。


最初からお金の関係なら話が早い。

ブ男は自身の唯一スキルを試すつもりなのだ。


◼️


その当日、パパ活ギャルはギャル友達とスタバに居た。


パパ活ギャルは悪い男共から身を守る為にギャル友達と共にパパ活しているのだ。


パパ活ギャル「すぐ帰ってくる」

そう言って待ち合わせ場所に向かった。


◼️


それ目的で有名な待ち合わせ場所で待つブ男に声をかける。

パパ活ギャル「ブ男さんですか?」

ブ男「はい」

パパ活ギャル「行きましょう」

話が早い。

初対面でも分かるようにお互いの服装はマッチングアプリで連絡済みだ。

後はパパ活ギャル行き付けのホテルへ入る。


パパ活ギャル「この部屋でいい?」

ブ男「うん」

パパ活ギャル「前払い」


ブ男は受付カウンターに向かった。

受付「何時間ですか?」

ブ男がギャルの方を見ると、

パパ活ギャル「短くていいよ」

ブ男「?」

ブ男に悪い予感が走り、思った。

ブ男『逃げる気だったか』

逢った時から発動させていたスキルがフル稼働し始めた。


部屋に入る。

パパ活ギャル「まずお金ください」

ブ男「いいよ?」

お金を渡した。詰み。


パパ活ギャルは服を脱ぎながら、

パパ活ギャル「じゃあお風呂入って」

ブ男「いっしょに入ろ?」

パパ活ギャル「後で入るから」

ブ男は服を脱ぎ、風呂場のシャワーを出した。

しかしまた風呂場から出てきて

ブ男「初対面だし、いっしょに入らないと」

と、声をかける。

パパ活ギャルは上半身だけ裸だが、胸は長い髪と片手で隠して立っている。

スマホを見ながらウザそうに

パパ活ギャル「いいから先入って」

ブ男「何で?」

答えは知っている。


パパ活ギャル「もう、この時間がムダ、はよはいって」

ブ男「わかった」

覚悟を決めて、シャワーを止めて戻る。

この一瞬で所持品を持って逃げられたらゲームオーバー。裸の一文無しだ。


パパ活ギャルはまだ居た。

ブ男は脱いだ服を着はじめた。


お互いがお互いの目的を知る。

ブ男「何もしてないし、お金返してくれない?」

パパ活ギャル「返すわけ無い」

パパ活ギャルも服を着はじめた。

ブ男「そっか、、」


ブ男の意地とスキルが融合する。

ブ男「最後にそのおっぱい見せてくれない?そのお金はその代金でいいよ、そしたら、お互い悪い気しないやん」

パパ活ギャル「なんでやねん」

ブ男「、、じゃあもういいし、諦めるけど、あと一分だけどうでもいい話聞いてくれない?」

パパ活ギャルは無言で服を着はじめた。

着る間に話せと。


ブ男「昔、俺が小学校の頃、近所に駄菓子屋さんがあってな、毎日のように100円お小遣いもらって買いに行ってたの、ある日欲しいおもちゃがあって100円じゃ買えなくて万引きしてしまったんよ、、」

まだ時間はある。

ブ男「小学生だったから怖くて、、謝らずじまいで、でもその後も知らん顔して駄菓子は買ってたの、多分駄菓子屋のばあちゃんは万引き知ってて何も言って来なかった、」

ブ男「その後、大人になってから駄菓子屋の前を通った時に万引きの事思い出して、、駄菓子屋に寄って、、いっぱい駄菓子を袋に詰めて買ったろうとして、ばあちゃんに一万円渡したの」

「子供のころ万引きしてしまいました、ずっと謝りたくて、、ごめんなさい、お釣りはいらないです」

ブ男「そう言って店出たの」

パパ活ギャル「何の話?」

ブ男「俺は謝れたけど、、君はもう二度と俺に会う事ないでしょ?でもこの先いつか必ず、返したいな、って思う時が来るけども」

パパ活ギャル「返さんって」

ブ男「返したいと思って返せた俺と違って、君は返せないんだよ、もう一生会わないんだから、返したいのにって、辛い思いする、だから先に言っておく」

ブ男「返したい、、と心の底から思った時に、もう返した事にしていい、、」

お互い服は着終わっている。

ブ男「もう帰っていいよ、大丈夫、追いかけないし」

パパ活ギャルは小走りで部屋を出て行った。おっぱいは見せず終い。


◼️


パパ活ギャルはスタバに小走りで戻って行く。

そこは安全な場所、ブ男が追いかけて来たとしても。


その目と耳は少し赤かった。

走ったからか体温も上がっている。

パパ活ギャルは意図的に何も考えない様にしていた。


ギャル友が化粧ではない変化に心配する。

ギャル友「大丈夫?」

パパ活ギャル「だ、いじょぶ」

言葉を発した事で、

しかし言い様の無い複雑な感情が爆発しそうになってると感じた。


安堵、罪悪感、安堵、、、考えたくない

知らない人の無償の優しさの連鎖?考えたくない


パパ活ギャルの心はブ男のスキルで裸にされていた。

ギャル友の無意味な心配はパパ活ギャルの裸の心に、いつもの何倍も響いた。


泣きそうな時に「泣きそう?」と追い討ちしている。


ギャル友「何されたんよ」

真摯な心配、怒り、無慈悲な質問。

今すぐにでも報復されるかも知れないブ男。

何もかもがパパ活ギャルを激しく動揺させるだけ。

絶望的な言葉を、

静かなスタバで言うしかなくなった。

「な゛ぁにぃも゛、サレテな゛い゛ぃぃ」


パパ活ギャルは号泣した。

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パパ活ギャルVS駄菓子屋ばあちゃん 淀川馬琴 @yodogawabakin

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