第20話 村人たちは好き嫌いを克服するようです〜ただし学院は無理〜
ディナの会計が終わり、オーナーさんとシータが小包を持って戻ってきた。
「何選んだのー?」
ディナがシータの元でぴょんぴょんと跳ねる。
「内緒」
教えてくれないんだ。
「改めて、強盗を捕まえてくださりありがとうございます。そして素晴らしいご注文ありがとうございました」
オーナーさんはこちらを見てやけににこにこしながら言った。
「私たちも素敵なアクセサリーを見ることができて楽しかったです。王都に来た時はまた寄ります」
エリーはそう言って手をディナの頭にぽんとのせる。
オーナーさんはディナの手にもつ小包に気がつくと、にっこり笑った。
「私たちは心を込めて作った装飾品でお客さまを笑顔にすることがお仕事ですので。気に入っていただけたら幸いです」
そう言った後、オーナーさんはディナとヴィラを見て少し考えた。
「……お客さん。失礼ですがサイハテ出身の方ですよね」
「そうですが……」
オーナーさんはなら、気をつけた方がよろしいかもしれません、と真面目な顔で言った。
「最近淡い髪色の子供を狙った誘拐事件が多発しているらしいのです」
サイハテの特徴である淡い色の髪。
正真正銘、サイハテの子供が二人もここにいる。
「噂ですが、裏で装飾品に偽装した対サイハテの拘束具も出回っていると耳にしましたので念の為……」
「ありがとうございます、気をつけるようにしますね」
気をつけます、と二人も頷いた。
____
防具屋にも寄って防具の為に採寸を済ませ、宿に着くとシルビアさんが美味しそうな香りと共に出迎えてくれた。
「おかえりなさぁ〜い♡夕食、ちょうどできてるわよ〜」
本日の夕食のメニューは和食ハンバーグ定食。
白米にお豆腐とわかめの赤だし、大根おろしがのったハンバーグの付け合わせには茹でキャベツとにんじんのきんぴらとその他諸々。
「わぁ美味しそう!そして豪華!」
「ふふふ、よかったぁ、もしリクエストがあったら教えてね。ただし、アレルギー以外の嫌いな食べ物は一口だけでいいから食べてちょうだいね」
にんじんが嫌いなお子様二人はぎくり、と肩を動かす。
「にんじんアレル「あ、全員アレルギーはないのでお気遣いなく」
シータが先手を打つ。
「誰だって嫌いな食べ物はあるわぁ〜実は私も嫌いな食べ物あったのよ〜でも食べ方変えるだけで好きな料理に変わったの。だから一口だけでも食べてみて。美味しかったら好きなものが増えて素敵でしょう?」
「にんじん食べないとだめ?」
ディナが涙目でエリーを訴える。
可愛いけど、私は心を鬼にするわ。食べてみなはれ。
「はい、ディナあーん」
有無を言わさずにんじんのきんぴらをディナの口に入れる。
「!!?」
もぐ、もぐ、と沈黙が続く。
「……美味しい!」
ぱっと目を輝かせるディナ。
その様子にヴィラも意を決してきんぴらを口に運ぶ。
「……美味しい、なんで!?」
「口に合ったようでよかったわぁ〜甘辛くしてごま油で香りをつけて人参嫌いの人の苦手な風味が気にならないようにしたの〜」
あとでレシピ教えてもらおう。
ぱくぱくと消えていくにんじんのきんぴら。
私の分がなくなる!
「お兄ちゃんとエリーは好き嫌い、ないの?」
ふとディナが聞く。
「オレはピーマンが苦手だった、ピーマンの肉詰めは好き」
「私は椎茸丸ごとが苦手だなー」
うん、誰でも苦手な食べ物ってあるよ。
「苦手な食べ物代表格って感じねぇ、私はトマトが大嫌いだったわ。でも、ある時父親にトマト料理店に連れて行かれて、でも食べてみたらチーズとの相性が抜群で美味しくてねぇ」
「トマト料理のお店!?美味しそう」
「確かまだあると思うわぁ、行ってみたらどう?地図、書いてあげるわ」
やったー!ありがとうございますとヴィラが言った。
トマトもチーズも好きだもんねぇ。
____
「明日はどこ行くの?」
夕飯を食べ終え、お茶で一息ついているとヴィラが聞いてきた。
「明日はねぇ、フィクスト学院を見学しようかと」
私が言うとびくり、と皆が固まった。
「私とシータが行ってた大きな学院だよ。ああ、お父さんが見学の許可とってくれたみたいだから、気にしなくて大丈夫」
「学科は沢山あるんだけど、行くなら二人は剣術科かなぁ」
「でも、他の学科が気になるならみてもいいし、なんなら全部見て回ろっか」
「造形科は変わった魔導具とか見れるし、使役科とかだと魔獣がいて面白いよ?」
さっきからどうしてみんな喋らないんだろう。
何故か目をぱちぱちさせている。
「……まあ、色々、あるから、パンフレットとかもあるだろうし、明日貰って気になった所見学しようか」
やっとシータが口を開き、こくこくこくと頷く二人。
どうしたんだろう、と首を傾げるとシータは困ったような表情を浮かべていた。
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