第3話 ダンジョンの奥へ
いよいよ朝が来た!
学園の入り口には、巨大な像がある。
どこかさわやかな笑顔と、石造りなのに今にも揺れ出しそうなサラサラした髪。
幼いころに読んだおとぎ話の本にも描かれていた、初代勇者の像である。
勇者を育成する学園だけに、生徒だけでなく教師たちにとっても憧れの存在なのだ。
その像の足元に、勇者パーティーと選抜された勇者候補生たちが集結していた。
さらに、毛並みのきれいな馬が十数頭ほど整列していた。
移動には馬を使うらしい。
「リヴィアス君、乗馬は初めてだろう。ケガをするといけない。今回は私と乗りたまえ」
馬に乗ったレオナルト様が、手を差し出した。
俺なんかをこんなにも気にかけてくれて、なんてすばらしいお方だろう。
きっと初代勇者も、こんな感じの人だったに違いない。
「それじゃあ、勇者の卵たち。はりきっていこう!」
レオナルト様の号令とともに、いざ出発だ。
生徒や勇者パーティーのメンバーを乗せた馬たちが、一気に駆け出す。
学園を出てしばらく走ると、活気ある街並みに出る。
「勇者さまー!」
「おお! なんと立派な!」
「キャー! レオナルト様、こっち見てー!」
町の人々が道の端から歓声を上げた。
勇者を一目観ようと、たくさんの人が集まってきているみたいだ。
レオナルト様も笑いながら、民衆に手を振っている。
そういえば、この町の住人はお金持ちや貴族が多いんだっけ。
町をよく見れば、大きくて立派な館も多い。
商業も発展していて、大きな港や飛空艇乗り場もある。
さらに建物の隙間からは、大きなお城が見え隠れしていた。
俺が住んでいた町とは全然違う。
なんでこんな町にある、あんなにも立派な学園に、俺なんかが通えてるんだろう。
剣なんて習ったこともないし、魔法の才能もあるとは思えない。
俺とは住む世界があまりにも違う街並みを眺めながら、ついみじめな気持ちになってしまった。
いや、昨日は学園長にも成長を褒めてもらえたんだ。
今日は勇者様たちに学ばせてもらって、これから頑張っていかなきゃ!
そんなことを考えてる間に、馬たちは町の入り口を抜けていった。
そこからは広い平原になり、さらにしばらく走って森の中へと入っていく。
馬で走ったのは二時間ほどだったか。
ついに目的のダンジョンに到着した。
どうやら、学園からさほど遠くない場所にあったようだ。
探索するダンジョンは石造りの古代遺跡らしい。
入口と思われる扉は開きっぱなしになっていて、その奥は狭い通路が延々と伸びていた。
* * *
ダンジョンの入り口付近で昼食をとり、レオナルト様が立ち上がる。
「よし! 腹も満たされたところで、ダンジョン探索といこうか!」
「レオナルト様」
アレックスが手を上げる。
「お! どうした? 質問か?」
「ダンジョン探索ってしか聞かされてないんすけど、いったい何をするんすか?」
「そういや、話してなかったか。はっはっは、すまんすまん。でも今はまだ、詳しくは言えないんだよね」
レオナルト様が答えると、ヴァンサン様とエノーラ様も次いで補足しだした。
「おまえら一応、選ばれた人間だからね。選ばれた者として見ておかなきゃいけない、重要なことなんだよね」
「ふふふ、見てのお楽しみよ!」
勇者様たちは笑いながら言葉を濁す。
それに対してアレックスは不満げだ。
しかも、なぜかこっちを睨んでいる。
選ばれた人間、その中に俺が混じっているのが納得いかないのかも。
「それじゃあ、改めて出発! みんな、私についてこーい!」
レオナルト様が、ダンジョンの中へと入っていく。
みんなも続々とそのあとに続いた。
数メートルほど入ったあたりで、突然壁がぼんやりと光った。
驚いてか、学生たちがざわめきだす。
「ルミナストーンが仕込まれてんじゃん。もう探索しつくしてんじゃねぇんすか、このダンジョン」
「ははは、さすがは学園一の天才君! ほぼ正解だ。すでに隅から隅まで人の手が入っている。こうして魔力で灯りを付けることもできるようにしてあるのさ」
「じゃあ、探索なんて意味ねぇじゃんか。いったい何しに来たんすか」
「うふふ、せっかちねぇ。でも、鋭い子。実はね、探索に来たわけじゃないの。とーっても重要な任務があるのよ。それをあなたたちに見学してもらっちゃおうってわけ」
「あ! エノーラ、そこまでばらしちゃう?」
まだ納得いってない感じのアレックスをよそに、レオナルト様とエノーラ様は楽し気に言葉を交わす。
それからしばらく、入り組んだ通路を進んでいった。
「はい、生徒諸君! ここから先はモンスターも出てくるから、ほんの少し気を引き締めていこう!」
レオナルト様がそう言った矢先だ。
前方からドシドシッと重量のありそうな足音を立てながら、牛の顔をした二足歩行のモンスター数体がこちらへ向かってきた。
それぞれ、手には斧やハンマーを持っている。
「ちょうどいいとこに出てきたよね。この生徒たちって優秀なんだよね。レオナルト、生徒たちのお手並み拝見したいよね」
「よし! それじゃあここはまず、君たち全員であのモンスターたちを倒しちゃおうか!」
え?
戦うって、生徒たちだけで?
俺もってこと……だよね。
「ふふふ、緊張することないわ。学園での訓練通りにすれば大丈夫。一人で無理せず、自分の役割を考えながら、お友達と連携するのよ」
エノーラ様、それ……俺には無理だ。
どうしよう。
友達なんていないし、魔力は伸びてても使える魔法もないし、戦い方なんて教わってない……。
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家畜扱いされて魔界へ追放された俺は、魔王の力を得て人間様どもをざまぁしながらヒロインたちとともに人間界を支配する 我那覇アキラ @ganaP_AKIRA
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