第33話 竜天女の墓
黒竜様の姿になったアイザックに乗って、空を移動します。
そして、目的地であるとある
やっぱり竜に乗って移動するのって、本当に便利ね。
竜都から歩いたら一日もかかる距離なはずなのに、あっという間にたどり着いてしまった。
「この山、カレジ王国の竜山に似ている気がするわね」
ここは緑が豊富で、
その建物のひとつに、竜木に囲まれている
どうやらここが、目的の場所みたい。
私は黒竜様の背から降りて、
「それにしても、この古代文字が、ジェネラス竜国の文字だったとは驚きよね」
カレジ王国で研究していた、竜山の遺跡の古代文字。
その正体は、ジェネラス竜国の標準語である、
それはつまり、カレジ王国とジェネラス竜国が、古くから親交があった証拠でもある。
ジェネラス竜国で初めて本を読んだ時に受けた衝撃は、いまだに忘れられません。
そしてこの祠には、竜語でこう書かれていました。
「偉大なる
人の姿に戻ったアイザックが、私の隣に立ちます。
手には、竜木の花で造られた花束が持っていました。
「竜天女に会いに行くって、お墓のことだったのね」
「勘違いさせたのならすまない。だが、来てみたかっただろう?」
「もちろん! アイザック、私を連れてきてくれてありがとう」
私と同じ、竜を愛した女性。
きっと
「でも、安心してください。あなたがやり残したことは、私が対処しておきましたから」
竜天女が竜のために創り出した竜茶。
その竜茶のおかげで、竜はこんなにも強大な存在へと成長した。
だけどその結果、竜天女は竜茶の毒により命を落とした。
きっと、さぞ無念だったことでしょう。
でも、安心してください。
それら竜天女がやり残した竜茶についての後始末は、すべて私がお引き受けしました。
「ですので、安心してお眠りくださいませ」
アイザックから、花束を受け取ります。
竜天女が愛した、竜を象徴する
たとえそれが人族にとって毒であろうとも、それをお墓に手向けることが竜天女にとっては嬉しいことだろうと思った。
だって、私がそうだから。
竜の花であれば、たとえ毒であろうともそれを
毒だとわかっていても、竜茶を飲みたい。
きっと竜天女も、私と同じでどうしようもないくらい竜が好きなはずだから、これで喜んでくれるはず。
「竜天女様、また来ますね」
偉大なる先輩のお墓を後にします。
今度は私が、この国の竜たちを幸せにしてみせる。
あなたの分まで、私が頑張りますとも。
──なにせ私は、竜天女の再来らしいですからね。
そうして竜茶の毒による事件が落ち着き、国が日常に戻った頃。
私とアイザックは国王陛下に呼ばれ、
「アイザックそしてルシル、今日はよく来てくれた」
アイザックのお父上である国王陛下と会ったのは、竜茶の真相を伝えた時以来。
あの時の様子と比べると、いまの陛下はすこぶる体調が悪そう。
顔色も悪ければ、
──この数か月で、まさかここまでお老けになるなんて。
国王陛下が竜茶の毒のことを知って、大変ショックを受けていることは知っていました。
なにせ自分が人族のためを思って
心を痛めた陛下は長らく床に伏せられていたという噂だったけど、それは本当のようでした。
そんな大変な時に、わざわざ私たちを呼び出して何をするつもりなんだろう。
しかも大臣や官僚だけでなく、国の重鎮たちも一同に集まっている。
「二人に来てもらったのはほかでもない。大切な話があるのだ」
国王陛下が、私の顔を見ます。
「まずルシル……我が国の人族を救ってくれて、感謝する」
「へ、陛下! 頭をお上げください!」
「ルシル、君は素晴らしい
陛下が、
「ルシル・ローライト嬢……そなたに黒竜勲章を授与する」
「く、勲章ですか!?」
私が勲章を!?
そんなの聞いてないんですけど!
周囲の人たちも、驚きの声をあげます。
「凄いぞ。
「ジェネラス竜国に大いなる発展をさせた功労者にしか授与されない、あの黒竜勲章か!?」
「しかも女性が黒竜勲章を授与されるのは初めてのことだぞ」
「ルシル様の貢献を考えれば、当然のことだな」
周りの人たちはそう私のことを肯定してくれているけど、いきなりのことで驚いてしまう。
困惑する私に対してアイザックが「ルシル」と小声で
「陛下、ありがたく
国王陛下から黒竜勲章を受け取り、気が付きます。
ちょっと待って。
この勲章、竜の鱗でできてるんですけど!
──えへへ。
良い物もらっちゃったかも。
あとで詳しく調べることにしましょう。
「続いてアイザック、前へ」
国王陛下の前にアイザックが移動します。
そして、陛下が立ち上がりました。
「我は今回の竜毒に関する事実を、重く受け止めている。これまで犠牲者が出たのも、ひとえに我のせいであろう……よって我はこの責任を取り、
陛下の発言によって、
その発言が意味することは、ひとつ。
「アイザック王太子……我はそなたに、この
「……陛下。このアイザック、
アイザックが王になる。
それが決まった瞬間でした。
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