第25話 交戦の日々 その1
それからというもの、朝の春葉との挨拶はなくなり、昼のお弁当タイムもなくなり、放課後になって三人バラバラに部室に向かうのが毎日となった。
部長がいることはまれで、各々の思惑を抱えた俺たちだけが、この接触を許された密室に詰め込まれることになった。
時に春葉とじゃれあって。また別の日には夏月と長い抱擁を交わした後にキスをして。春葉と夏月が互いをけん制し合いながら、俺に会話を持ちかけ誘惑する日々が続き……。
◇◇◇◇◇◇
「今日は二人ともいるのか……」
俺が部室に入ると、春葉、夏月が待ち受けていた。春葉が俺に近づいてきて、いきなりキスをする。
心の準備が出来ていなかったので、うっ……となされるがままだったのだが、夏月が割りこんできて、俺の口を春葉から奪った。
今度は夏月に蹂躙される。
春葉はとにかく優しく口内を撫でてくれるのに対し、夏月の舌はケモノの様に大胆不敵で傍若無人だ。
夏月に俺を奪われた春葉が、不満を漏らす。
「夏月。昨日譲ったじゃない。今日は私の日なのにっ!」
「そんなこと誰が決めたのかしら? 冬也は私がお気に入りみたいだから、毎日毎月毎年ずっと私の日ね」
ふふっと挑発的に春葉に目をやる夏月。春葉はその視線に耐えられなかった様子で声を荒げる。
「クラスでも夏月はちょくちょく冬也君に話しかけてるの、条約違反じゃないの? 私が冬也君と親しくできないのをいいことに」
「すればいいじゃない、ご自由に。春葉の置かれた立場まで考慮して動く程私はお人よしじゃないの」
「悪女っ!」
春葉が、言葉を投げつけた。
「悪女上等。私はむかし春葉に出し抜かれた時に、狡くて狡猾な女になるって決めたの。その決意の通りに動いているだけで、それ以上でもそれ以下でもない」
「ふんっ! 覚えてなさいっ!」
春葉が、捨て台詞を残して去っていく。
今日は夏月の勝ちらしい。女子とエチぃことをしているのに、こんなに憂鬱になるのはどうしてなのだろうかと、俺の疑問は深まるばかりだ。
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