りゅうりゅうりゅうアドベントカレンダー2024

藤泉都理

12/1 招待状




「ぬうううううう」

「どうしたんすかあ?腹が減ったんすかあ?」


 『和干菓子わひがし国』を守護する龍、野良のらは一枚の招待状を持ったまま唸り続けていたので、野良の世話係である緑鬼、すいは身体を横にしたまま、のんびりゆっくり気の抜けた口調で尋ねた。

 いつもならば、さっさと起きろやるべき事は山ほどあるだろうと叱りつけるところであったが、今はそれどころではなかった。


「『洋仁紫ようにし国』を守護する竜、吟華ぎんかから、十二月二十五日に行われるクリスマスパーティーに招待されたのだ。我と貴様、吟華、吟華の世話係である騎士のれいの四人、極々内輪で行うらしい」

「え~~~。俺もっすかあ?いいっすよお。俺は留守番してるんでえ」

「貴様も招待されているのだ。そういうわけにはいかん。そもそも貴様は我の世話係であろう。招待されておらずとも共に来るべきなのだ」

「あ~あ~。何で俺は世話係に選ばれたんだろう、なあ」

「嘆きたいのは我の方だ。貴様の怠惰な性根を叩きなおしてくれと頼まれたのだぞ」

「あっはっは。まだまだ叩きなおされていませんけどねえ」

「ああ。そうだな。まったくその通り」


 翠は首を傾げた。

 いつもならそろそろ堪忍袋が切れて声を荒げているだろうに、野良はよほど招待状に気を取られているらしい。


「ぬうううううう。クリスマスパーティーに招待されたのならば、何か『和干菓子国』の名物料理、名物菓子、名物酒、名物土産を持って行かなければ。ぬうううううう」

「そんなに考える事ですかあ?新聞を取り寄せれば、一位の名物料理も名物菓子も名物酒も名物土産も分かるじゃないっすかあ」

「莫迦者。我はこの国を守護する龍ぞ。新聞なんぞ取り寄せずとも一位の品物名は分かっておる」

「だったら何でそんなに悩むんですかあ?」

「翠」

「え。嫌です」

「町に下りる。用意はしなくていい。問答無用で連れて行く」

「………はい」


 野良に問答無用で背中に乗せられた翠は、この時ばかりは力を入れて振り落とされないようにしがみついたのであった。


(どこの高さから落ちても死にはしないけど痛いんだよなあ~~~)











(2024.12.1)



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