第50話

「………」


ヒカリは勇斗の迎えを玄関で待っていた。


「…イサトおにーちゃん…おそい…」


「アンタね!イサトさんだって、いつもアンタにかまってられないわよ」


ヒカリと同様に勇斗を待っているサキが矛盾した言葉を話す。




「だっしゅでくるっていったもん」


次から次に迎えが来て、帰っていく周りの園児達。








「ヒカリちゃん、お迎え遅いねぇ」


「うん…」


「遊んで待ってようね」


先生はヒカリに言って、部屋に戻っていった。




「………」


ヒカリは門のところまで駆けて行き、周りを見渡す。


でも、勇斗の姿はドコにもなかったーーーーーーーー…








「!!!?」


園内に戻ろうと振り返るとクレパスを捨てた女子学生が立っていた。




「げんき?」


また不敵な笑みを浮かべている。




「…や…やっ…」


ヒカリは後ずさり、転けて尻餅をつく。


「そんなに私が嫌なの?」




「………」

(イサトおにーちゃん)


ヒカリは涙が出てくる。




「泣くなっ、私だってアンタがウザイんだよ……!」


女子学生はヒカリの方に手を伸ばす。






バシッーーーーーーーー!!




女子学生の腕を掴んだのは息を切らした勇斗だった。


勇斗の顔を見る涙目のヒカリーーーーーーーー…




「ーーーーーーーー…ハァー…ハァー…何してんの?」


「…この子が転んでて…助けようと…思って」


「ーーーーーーーー…へぇ」


勇斗はヒカリの顔を見る限り、女子学生の言ってる事が信じれなかった。


「ーーーーーーーー…最近、コイツに何かしてたのってキミかな?」




「…えっ…何言って…っ、私はっーーーーーーーー」


「ーーーーーーーー…キミ誰?」


勇斗の質問に女子学生の表情は変わり徐々に後ずさっている。


「ーーーーーーーー…その制服ってウチの学校でしょ?コイツに何か用があるの?」


「………っ」










ダダッーーーーーーーー!!


女子学生は逃げた。




「ーーーーーーーー…おいっ!?」


勇斗は追うことはしなかった。




「ーーーーーーーー…ヒカリ」


泣いているヒカリを抱き寄せる。




「こわいよぉーーーーーーーー…」


ヒカリの声も体も震えていた。




「ーーーーーーーー…遅れてゴメンな、もう大丈夫だからさ」




勇斗は泣き続けるヒカリを何も言わず抱きしめた。

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