第一章 4-2 リアライズプリンタの中身
*
バタバタと階段を駆け下りる音に目が覚めた水色のパジャマを着た輝美は、乱れた髪をなでつけながら階段を下りていく。
階段を下りた先にある玄関には、すでに和輝とエルディアーナの姿はない。彼の靴と彼女の脚甲付きのブーツがなくなっていることから、外に出たのだろうと思った。
「こんな夜遅くに何に首を突っ込んでるんだか」
大欠伸を漏らし、リビングの灯りを点けてダイニングを抜け、キッチンへと入る。
流しの脇の水切りからコップを取って、冷蔵庫から出したペットボトルのミネラルウォーターを注いだ輝美は一気に飲み干し、もうひとつ欠伸を漏らしてリビングへと戻った。
「……これが例のリアライズプリンタって奴か」
機能もサイズもできる限り大きなものを選んで買ったと言うのに、ここ最近自分ではあまり使っていない大型平面モニタ。その上に置かれた機械を覗き込むようにして見る。
樹脂のカバーに覆われたリアライズプリンタは、仕事の際に使うことがあるプロジェクターにしか見えない。
撫でるように触れた後、人差し指の平で軽く叩くと、プリンタの上部が跳ね上がるように開いた。
思った以上に小さい基板や強い光を発する発光部などで構成された内部も、あまり見たことはなかったがプロジェクターの構造と違うところは見られない。
しかしひとつだけ、違う点があった。
ユニット化されたレンズの後ろに、増設されたらしい紅い宝石のような素材のレンズがあった。
「――やっぱりってところか」
その紅いレンズに注目していた輝美は目を細め、そう呟いた。
開いていた上部の蓋を閉じ、大きなため息を吐き出す。
「エルちゃんもソフィアちゃんも強いみたいだし、とりあえずはあの子たちに任せておいても問題なさそうだけど、ワタシも動かないとダメかぁ」
欠伸を漏らし、頭を掻きながら、輝美はリビングを出て自分の部屋へと向かった。
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