37 無凰





「…行っちゃった」


「なんか嵐みたいだったね。」


月島はうっすら微笑んで。

それから、テントの外に目を向けた。










§




「いらっしゃいませ〜っ!」


お得意の営業スマイル!



「うわ、まじで天使じゃん」

「こーゆー子が彼女だったらな〜」

「オレにも笑ってよ、マネージャーちゃん」


どんどん、男子たちが集まってくる。


「え〜っと、鈴カステラ買ってくれたら…?200円ですよ?」


逃げ方わかんないどーしよ



「なあ、一緒に写真撮ってくんない?」

「てか、RINE交換しようよ」

「文化祭終わったらまじでご飯行こーよ!」



「あっ、ギョーム外ってやつですかね?」


「えー、なにケチ〜。ノリ悪ぅ〜」

「さっき他のやつにはピースしてたじゃん?」


やだ、やだ。


なんで、こんな空気に……?


「えーっと鈴カステラ5個買ってくれたので…」


思わず後ずさる。

腕をぐいっと引っ張られ__________そうだった


あぶないあぶない


「やめてください。」


その声は低くて、冷たくて。


でも、あったかかった。


「_____月島〜__________?」


相手の腕掴んでる。


「マネージャー、仕事中なんで。」


そーだそーだ!!


「は?別にいいだろ文化祭だし」


「だったら他のとこ行ってください。“うちの”売り子困ってるんで。」


その“うちの”って言葉に、

なんか、胸の奥がキュってなった。


「先輩に対してなんだよお前。礼儀払え。」

「今この状況で礼儀払う相手が?笑わせないでください。」


__________なんか_____


_______________月島めちゃめちゃ怒ってる…?


「何様だよコーハイ君よ。」


「そーですね。月島 鷹征たかゆきの息子って言えばわかりますか?」


たかゆき…?


おとーさんかな?


「知るわけねぇだろ!」


おー_____大笑いしてる________


「あ、活動名なんでしたっけね。」


活動名…?!


そんなにすごい人…?


「思い出しました。無凰むおうですね。」



あれ、先輩の顔が固まった。


めちゃめちゃすごい人だったっぽい_____?


あ、逃げた。



「……大丈夫?」



月島が、すこしだけ眉を寄せて、

私の顔をのぞきこむ。


「……うん。だいじょぶ。ありがと」


でも――その瞬間、


じっと、こっちを見てる女子と目が合った。


でもすぐに逸らされた。


そしてそのまま、どこかに消えていった。


「浅野さん。名前ペンもってる?」

「え、あるよ。えーっとね、」


スカートのポケットガサガサする。


「あったっ!」

「よし。おっけー。」



?なにするんだろ。

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